ごまをするすり鉢とすりこぎ。どの家庭にもあるわけではないだろうが、“登紀子ばぁば”こと料理研究家の鈴木登紀子さん(88才)は、料理道具の中でも登場回数が多く、大切に使っているという。そんな鈴木さんが、ごまをする極意を教えてくれた。
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白和えのためのお豆腐、ごまよごしのための黒ごま、ごま和えの白ごま…。もちろん、炒りごまもすりごまも市販されていますし、電動のごますり器もありますから、なぜ、面倒なことをわざわざ手で? と思われるかもしれません。
でもね、ごまをゆるりとていねいに油が出るまですって、ねっとりしたところをいただくおいしさ、香りたかさは、すり鉢とすりこぎでなければ望めないことなの。昔はおみそも必ずすり鉢ですって、お出汁の中に濾し入れたものです。それがいまでは、お出汁入りのおみそや、はたまたお湯に溶くだけというものもあって、便利といえば便利な世の中になりました。
しかしその分、私たちの食文化が、手間ひまかけた滋味深い味わいから、どんどん遠のいているような気がします。インスタントでしかみそ汁の味を知らない子供たちが親になったとき、いったい食卓に何を並べるのでしょうか。
あら、ちょっとお話が逸れてしまいました。
ここで、久しぶりにすり鉢でごまをすってみよう、もしくは、すり鉢とすりこぎを買おうと思ってくださったかたへ、上手に使いこなすコツを教えましょう。
まず、すり鉢の下にきつく絞った布巾を敷いて、すり鉢が動かないように安定させます。子供にしっかり押さえてもらってもよいですね。昔もそれは、子供の役目でしたから。
次に、体をちょっと斜に構えます。すり鉢に正面から相対すると、動きがとりにくいからです。斜に構え、すりこぎをなるべく寝かすようにして中ほどを片手で握り、もう片方の手を軽くその上に添えます。
そうして、リズミカルにていねいに、ゴリゴリ、スリスリと、小気味よい前奏曲を存分にお楽しみくださいませ。
※女性セブン2012年7月26日号