いよいよ2012年夏のバーゲンセールが本番を迎え、全国各地の百貨店やショッピングセンターには連日、多くの“バーゲンハンター”が押し寄せている。
しかし、今年は例年のバーゲン商戦とはちょっと様相が違う。百貨店首位の三越伊勢丹ホールディングスと業績好調なルミネの「業界勝ち組」が、セール開始日を業界の常識となっている7月1日から2週間遅い13日としたのだ。このことで戸惑っている人は少なくない。
50代の主婦がいう。
「いつも洋服を買うのは三越・銀座店と決めていましたが、今年は松屋や高島屋のほうが早くセールをやっていたので、欲しかったブランド商品の値段を見比べることができなかったんです。結局、松屋で買ってしまいましたが……」
そもそも夏物バーゲンの開始日は、なぜ梅雨も明けない7月1日と決まっていたのか。流通コンサルタントの月泉博氏が解説する。
「この不況下で苦戦を強いられている百貨店業界は、利益を圧迫する在庫の山を1日でも早く他店に先駆けてバーゲンで一掃したいと、チキンレースを繰り広げてきました。その結果、早いところでは6月下旬、遅くても7月1日には一斉にバーゲンを始めることが業界の通例になっていたんです」
そこに待ったをかけたのが三越伊勢丹だった。ルミネはこの動きを見計らって三越伊勢丹に同調したと見られている。
では三越伊勢丹はなぜ、みすみす集客や在庫処理の機会を増やせるバーゲンを遅らせたのか。そこには、同社なりの明確な戦略が見てとれるという。
「三越伊勢丹は今後、敢えて安売り競争には参入しないということだと思います。いってみれば、セレブな顧客に商品の価値をきちんと認めてもらいながら正価で買ってもらいたい。百貨店本来の高額ビジネスを貫いていく構えなんでしょう。もちろんバーゲンだけの売り上げを見れば先手必勝であるのは百も承知ですが、安売りにしか流れない客は通常時の顧客にはならない、と見切ったのです」(月泉氏)
果たして、そのプライドと覚悟は吉と出るか凶と出るか。