作家の落合信彦氏は現在の若者について、「現状に満足している」という“開き直り”が横行していると指摘する。そうした背景のひとつには、日本人の誇りの喪失があると氏は語る。
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7月に開幕するロンドン・オリンピックのマラソンに出場するため、カンボジア国籍を取得したお笑い芸人がいたが、これも日本人が誇りを失った象徴的な事例だ。
私はアメリカの大学に留学し、その後オイル・ビジネスのアップ・ストリームでちょっとした成功を収めることができた。その頃、パーティを開くと私の会社で雇っている弁護士たちからよく言われたものだった。
「ボスはなぜアメリカ国籍を取らないんですか? 我々に任せてもらえれば、すぐにでも手続きを進めますよ」
その度に、私は彼らを怒鳴りつけた。「お前たちはアメリカ人になることが最高だとでも思っているのか? 俺には誇れる祖国がある。日本人であることを誇りに思っている」と。
「誇り」や「恥の文化」を己の中に持っていれば、視野の狭い、利己的な振る舞いは抑制される。日本人全体がそうした特質を失いつつあり、その傾向が若者の「内向き志向」「開き直り」に繋がっているように思えてならない。
※SAPIO2012年7月18日号