世界で最も急成長を遂げてきた中国では貧富の差が拡大する一方だが、とりわけ億万長者の独身経営者たちは並外れた金満ぶりで、群がる女性たちの中からいかに素晴らしい伴侶を見つけ出すかに頭を悩ませているという。彼らの嫁探しとはいったいどういうものなのか。中国の内情に詳しい田代尚機氏(TS・チャイナ・リサーチ代表)が報告する。
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中国では社会全体の富の80%がわずか20%の人に集中しているといわれる。それゆえ羽振りのいい独身の企業経営者ともなれば、カネ目当てに群がる女性も少なくなく、企業家にとって結婚は高いリスクを伴うものとなっている。
ましてや独身貴族にとって自らの跡取りとなる子どもの教育は極めて重要であるため、世間知らずの金持ちの子女よりも才色兼備の優秀な女性を選ぶ傾向が強いという。中国人はどこまでも現実的なのだ。
そんな中、最近、ある結婚相談所が資産1億人民元(13億円)以上ある独身の億万長者だけを集めた中国企業家独身クラブを設立。彼らのお眼鏡にかなう優秀な女性を選ぶために、公募を行なった。彼らが女性に求める条件は、年齢が18~28歳、身長が160~175cm、専門学校以上の学歴を持ち、容姿端麗で気立ての良いことなど。
さらに、50歳でバツイチの経営者などは、女性の条件に「処女」であることも付け加えたそうだ。ちなみに「処女」条件について、応募者の間では「チェックなどできるはずがない」といった声もあり、中には「実際に選ばれたら、処女膜再生手術をすれば大丈夫」と豪語する女性までいたという。
驚くのは、応募者の数である。わずか11人のクラブ会員の嫁探しになんと2800人もの女性が応募。広州や深センなど10都市で順番に選考会が実施され、本土だけでなく、オーストラリアやシンガポールから駆けつけた女性もいたという。
女性の職業も多種多彩で、外資系企業のエリートからヨガのインストラクター、高校教師、証券アナリスト、ボストン大学の留学生、美人コンテストの優勝者まで参加。不思議なことに、年齢制限があるのに56歳の女性まで応募してきたという。この辺りは、いかにも中国らしい。
そこから、まず書類審査で320名に絞られたうえ、5段階にも及ぶ面接試験が行なわれた。第1関門は容姿チェック。広州のある整形外科医院の副医院長が審査するため、見かけ上の容姿だけでなく整形の有無をチェック。第2関門は性格を見る心理テスト、第3関門は占い師が面相や生年月日から将来性を占うというもの。そして第4関門で教養をはかる芸術文化度がチェックされ、最後の関門は、カネ目当てかどうかという感情や愛情の深さのチェックまでその道の専門家が審査するというものだった。
この難関を突破した約28人が晴れて億万長者たちと直接会えるパーティに参加できる。場所は5つ星ホテルで、しかも1泊2日で行なわれるという。
そればかりか、めでたく選ばれて、1回目のデートに漕ぎ着ければ、女性の推薦者に5万元(65万円)の現金か、相当の物品が贈られる。さらに交際に発展すれば、推薦者には300万元(3900万円相当)のマンションまで贈呈されるという。女性本人はもちろん、その推薦者もやる気満々になるのは当たり前の話といえる。ここにきて成長率の鈍化が懸念される中国だが、大富豪の婚活はとどまることを知らないようだ。