スポーツ

G馬場 「ユーは飯を食いすぎ便所の紙使い過ぎ」と言われる

 1999年に亡くなった後も、依然としてその人気が衰えることない、プロレス界の巨人・ジャイアント馬場(本名・馬場正平)。ここでは、ジャイアント馬場のプロレスデビュー直後、アメリカでの武者修行時代のエピソードを紹介する。

 * * *
 懐中1ドルも持たずに初渡米武者修行に出た馬場正平と、芳の里、マンモス鈴木の両先輩をロサンゼルスで待っていたのは、力道山と義兄弟の契りを結んだ、グレート東郷だった。東郷は3人のためにモーテルの一室を借り、毎日、きっちり1日分の食材を運んでくれた。もちろん、この費用は後にギャラからきっちり引かれたが。昭和36年7月の事だ。

 6年先輩の芳の里と、2年先輩の鈴木は、すぐに試合が組まれたが、キャリア1年足らずの馬場を、東郷は「まだ使いものにならない」と見ていたようで、芳の里と鈴木を迎えに来るたびに、馬場には、「ユーは試合がないのだから、ゆっくり寝ていなさい」と言い渡した。

 いつも馬場には、「ユーはメシを食いすぎる。トイレットペーパーを使いすぎる」と、やかましかった東郷は、自邸にあった練習道具も使わせてくれなかった。練習すれば腹が減るから、ゆっくり寝ていろというわけだ。

 東郷の噂以上のケチぶりに泣かされた馬場は、日本人街の人に頼んで芝刈りやペンキ塗りのアルバイトを世話してもらった。日給は25ドル。馬場は、ロードワークの後にその金から15セントのアイスクリームを食うのが、唯一の楽しみとなった。

 ようやく試合に出場できたのは、渡米して2か月近くもたった8月25日のサンディエゴ大会。東郷に、「ゴリラのマネをしろ」と指示され、それを拒否した鈴木に代わっての出場だった。馬場は、田吾作タイツに高下駄を履いて登場、リングに塩をまいて四股を踏んだが、これは当時の日系レスラーのトレードマークで、馬場にはさしたる抵抗感はなかった。どんなスタイルでも、何の展望も開けない芝刈りよりは、試合に出場するほうがマシだったのだ。

 相手は脂の乗り盛りのアート・マハリック。馬場はリングアウトで負けた。デビュー戦のギャラは、奇しくも芝刈りの日給と同じ25ドルだった。が、これは東郷が受け取り、“ビッグ・ババ”の名で連日出場するようになった馬場は、東郷から週給60 ドルを支給された。

 9月に入って、馬場は大きな屈辱感を味わった。サンディエゴ大会で馬場は、時のWWA王者フレッド・ブラッシーとノンタイトル戦で対決した。しかし、セコンド・東郷の稚拙な日本語のアドバイスを聞き違えた事が原因で敗れ試合後、大勢のレスラーのいる控室で、東郷に下駄でポカポカと頭を殴られたのだ。

 人前で泣いたことのない馬場が、大粒の涙を流した。馬場は、「もう我慢できない。帰国する」と覚悟を決めたが、飛行機代は持っていない。船での帰国運賃を調べたら、こちらのほうが断然高く、馬場はあきらめざるを得なかった。

文■菊池孝

※DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』第3巻より

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン