4月から始まった「反原発」を掲げる「首相官邸包囲デモ」は、日を追うごとに参加者が増え続けている。“現代のノンポリ層”が積極的に参加できるデモは、主催団体関係者が「ただ“騒ぎたい”といって酒を飲んで参加する人もいます」と語るように、無秩序であるゆえの危うさも孕む。
だが、“デモの作法”を知らないのは参加者側ばかりではないという。ある警察庁OBが語る。
「今の機動隊は一般人の大規模なデモをほとんど体験していない。反社会的な団体や“デモのプロ”が相手なら、警棒で殴ったり安全靴で蹴っ飛ばしても相手が文句をいうことはほとんどないが、ごく普通の主婦を怪我させたりすれば世論は政府批判に回ってくる。万一、樺美智子のような事件(※注)が起きようものなら、政権がひっくり返りかねない事態に発展する」
双方が危うさを抱えたまま、デモの参加者は日増しに参加者が膨れあがる。毎週金曜日の「官邸包囲」だけでなく、7月29日には「国会大包囲」と題した反原発デモが予定され、「規模は6月29日より大きくなるのは間違いない」(前出の主催団体関係者)と見られている。
この展開を1年前に予言していた、20年以上にわたる日本政治研究で知られるカレル・ヴァン・ウォルフレン氏は今後の展開をどう見るのか。
「日本人が政治の不誠実さに対して声を上げるようになったことが、良い意味での日本の転換点になることを期待しています。
重要なのは新聞やテレビなどの大メディアです。彼らは一方的に政府側の説明を垂れ流すのではなく、国民の声も公平にとりあげるべきです。声を上げる国民が欲しているのは正しい情報です。原発にしても消費税にしても、そして小沢一郎氏の資金問題にしても、権力側は不都合な情報を隠してきた。そうした問題の真実をメディアが国民に知らせることができるなら、この国民運動は日本を良い方向に変えていく力になると思うのです」
※注:1960年の安保闘争に参加していた東京大学学生の樺美智子が、警官隊と衝突して圧死した事件。
※週刊ポスト2012年7月20・27日号