小沢一郎・元民主党代表が離党したいま、民主党の最大の実力者になりつつあるのが、仙谷由人政調会長代行だ。その仙谷氏が推し進めているのが原発輸出だ。仙谷氏を突き動かすものは何か、ジャーナリストの須田慎一郎氏がレポートする。
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6月27日に開催された東京電力の株主総会を挟んで、複数の大手メディアが、東電が原発輸出事業から撤退することと、それに伴って民主党政権が国策として推進してきた同事業の先行きが不透明になったことを相次いで報じた。
だが、経済産業省幹部がこう吐き捨てるように言う。
「何をいまさら。東電が原発輸出事業から撤退することは、とうに織り込み済みの話だ」
東電の同事業からの撤退が、福島第一原発事故の発生を受けた昨年時点で決まっていたのはもちろんだが、加えてその代役に関西電力が充てられることもほぼ確定済みと見ていい。
「ベトナムへの原発輸出については、すでに受注済みだ。福島第一原発事故後もベトナム政府の方針に変更はなく、実際に作業も進みつつある」(経産省幹部)
民主党政権内でも、ベトナムへの原発輸出の見直しについての声はまったく上がっていない。それもそのはずで、この原発輸出の旗振り役を務めている仙谷由人政調会長代行が、小沢一郎元代表の離党後、民主党内で最大の実力者となりつつあるからだ。
仙谷氏に近い有力代議士がこう証言する。
「もともと左翼運動の闘士だった仙谷氏は、ベトナムに対して並々ならぬ思い入れがあると言っていい。原発輸出に絡んで訪越した際には、わざわざホーチミン廟まで詣でて、その墓前で滂沱(ぼうだ)の涙を流しているのです。その仙谷氏がこの件の推進役である以上、撤退は絶対にあり得ない」
個人的な思い入れと国策を一緒くたにするならばあまりにリスキーだが、小沢一郎が去った今、やりたい放題となってもおかしくはない。
※SAPIO2012年8月1・8日号