国内

暴排条例施行で幹部20人以上がカタギに、3人自殺と事情通

 昨年10月、全国47都道府県で暴力団排除条例が施行された。それから半年、日本のヤクザはどのような影響を受けているのだろうか。東日本大震災後の福島第一原発に作業員として潜入し、原発とヤクザの密接な関係を暴き出したフリーライター・鈴木智彦氏が実態を報告する。

 * * *
 現在、暴力団社会はこれまでにないスピードで変化している。昨年10月、全国の都道府県で出揃った暴力団排除条例が、前代未聞の脅威となったからだ。非合法なシノギに依存している個人や団体は、最初から逮捕・懲役というリスクを織り込み済みで、取引相手もまた同様だから、蚊に刺された程度の痛みしかない。だがフロント企業を経営し、“正業”をメインとしていた暴力団にとっては死活問題だ。

 20代の頃、対立組織の組員を射殺し、長期刑を務めた山口組系幹部はこう解説する。

「暴排条例はヤクザにとってロンギヌスの槍(注1)だ。ただでさえ景気が悪く、風当たりも強く、組織はどこも死に体だったのに、当局は俺らの死亡を確認し、追い打ちをかけるかのごとく暴排条例という槍を突き立てた。しこたま金を貯め込んだヤツならともかく、暴力しか取り柄のない俺や、末端の組員はどん詰まりだ。多くのヤクザは、もはや死体のようなもので、俺に言わせればゾンビだ」

 この幹部は刑務所の訓誡でキリスト教を選び、舎房で聖書を熟読したらしい。多少こじつけめいているが、暴力団らしからぬ文学的なメタファーだった。ただ、暴力団の未来に希望はみじんもないという点は、私の見解と一致する。

 事実、「もう終わりだ!」という悲鳴はあちこちから聞こえてくるし、「ヤクザでは金が稼げない。生きていけない」と嘆き、引退した組長も多い。当方の内部協力者いわばネタ元の暴力団幹部たちも、昨年の秋以降、20人以上がカタギとなり、3人が自殺した。怨嗟の呻きは暴力団社会の随所からあがり、諦観が蔓延している。

 暴排条例は暴力団との接点すべてを遮断するために作られている。処罰を受けるのは、商品・サービスを提供した一般人の側だ。いかなる理由があろうと、どんな取引であっても、暴力団との付き合いは違法であり有罪とされる。一般人をターゲットとしている部分に、暴排条例の画期的発想がある。警察署で拘禁され、厳しい取り調べを受け、それが公表されれば、一般人にとっては大きな社会的制裁だ。これに対し、暴力団側はなんの対策も立てられない。

※注1:ロンギヌスの槍:十字架に張りつけられたイエス・キリストの死亡を確認するために突き刺されたとされる槍。

※SAPIO2012年8月1・8日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン