大阪・泉佐野市がブチ上げた「飼い犬税」が波紋を広げている。「やりすぎだ」という声が上がる一方、「よくぞ言ってくれた」と喝采を博す意見があるのも事実。愛犬家や市民を二分する方策がなぜ、大阪の小さな自治体で生まれたのか。それは泉佐野市にある“特殊な事情”が絡んでいた。
泉佐野市は、大阪府南部の関西国際空港対岸に位置する、人口約10万人の商業都市。近代化の進む街だが、市内を歩くとある奇妙な光景が目に入ってくる。
道の電柱脇に鎮座する水の入ったペットボトル。猫よけなら、普通は家の庭などに置くはずだが……? 近隣に住む男性が説明する。
「あれは犬のフンや尿の臭いを消すためや。本当なら飼い主が気づいて流してほしいが、最近のヤツは放し飼いで散歩させるので、フンをしたことにも気づかない。夏場は悪臭がひどくて敵わん」
いわれてみれば道路脇には、黒く固まり乾燥しきったフンが残されていた。子供と散歩中だった主婦も憤る。
「この間なんて、児童公園の遊具の上にフンが置かれたままで目を疑いました。もちろん地面にもフンが多く残されている。桜の名所の公園なのに、レジャーシートを広げてお弁当という気分になれない」
泉佐野市が全国と比べて、特に犬の数が多いというわけではない。しかし場所の関係から、住民以外の「バカ飼い主」が流入しやすいという特殊性もあるという。
「関空の対岸に位置する『りんくうタウン』には、アウトレットモールがある。そこには市外から犬を連れた客が来ることも多いが、袋やスコップを持っている人は少ない」(近くに住む30代の男性)
隣接する公園にある約3kmの遊歩道の木の根元や芝生には、古く固まったフンがあちこちに散見し、その数は10か所以上あった。 市は、2006年にフンの放置を禁じる条例(罰金2万円以下)を施行した。
しかし、「昨年度も32件のフンの苦情が寄せられ、一向に改善が見られない」(環境衛生課)ため、千代松大耕・市長が、6月議会で飼い主に対して課税する「飼い犬税」の導入を明らかにした。
犬をペットとして購入すると30日以内に自治体に登録を行ない、年1回の狂犬病の予防接種が義務付けられる。その際に税金を徴収し、清掃や巡視員の人件費など犬のフン害対策に充てる考えだ。
課税額は「今後のフンの対策費用に合わせて検討する」(同課)というが、「業界では1000~2000円程度になるのでは、といわれています」(大阪府内のペット業者)
※週刊ポスト2012年8月3日号