愛知県では中学生9人が同級生を「自殺に追い込む会」をつくっていたことが発覚、宮崎県では川で溺れさせられた高校生が一時意識不明の重体に――大津の中2自殺事件をきっかけに、次々に明るみに出るいじめ問題。自分の子供がいじめられたとき、親は誰に相談したらいいのだろうか。
いじめが発覚した時、相談相手として担任の教師を選ぶ人が多い。だが、それだけで解決した例はほとんどないという。教師や学校には隠蔽体質があるからだ。いじめ問題などの相談を受け付けている、子ども未来法律事務所の弁護士・徳岡宏一朗さんがいう。
「私が相談を受けたケースでは、運よく担任の先生が必死になって対応してくれたとしても、校長先生の段階で握りつぶされることのほうが多い。また、担任が対応を誤ると、いじめた生徒に注意したことが“チクった”と思われて、いじめがエスカレートする危険もあります」
なかにはそれで恐喝され、お金を渡さざるを得なくなったケースや、学校側が生徒たちに口止めをして、証言がとれなくなることもあるという。
大津のいじめ自殺でも、「担任への相談」が悲劇を招いている。
手順としては、担任の教師に相談するより前に、保護者の中で親身になってくれる協力者を見つけるのが先だ。協力者と一緒に子供たちから話を聞いて、どんないじめがあったか、客観的事実を書面にしてまとめておくのだ。
「弁護士がいじめの相談を受けた場合、学校との交渉にはいる前に、友人の話を聞いて、事実を裏付ける作業をしていきます」(前出・徳岡さん)
それから、担任の教師のもとに相談に行く。
「ひとりで教師や学校に相談しても、“ただの噂”とまともに聞いてもらえないことも。最悪、“モンスターペアレンツ”扱いされることもある。まずは、証言を集めてから、仲間の保護者と一緒に教師に相談すれば、“見て見ぬふり”はできなくなる。いじめにあった親子だけの問題にしないで、みんなで考えることが重要です」(前出・徳岡さん)
相談した事実を残すためにも、学校側との相談内容は録音するのがベターだ。
各都道府県の弁護士会がつくる「子どもの権利委員会」では、いじめ問題などの無料相談を行っているので、活用するのも手。電話番号は各都道府県の弁護士会ホームページなどに掲載されている。法務省「子どもの人権110番」(0120・007・110)、文科省「24時間いじめ相談ダイヤル」(0570・0・78310)でも無料相談を行っている。
もうひとつ慎重になるべきなのは、加害者の親への直談判だ。大津の事件では、加害生徒の親たちは、いじめの事実を全面否認している。いじめ問題では、加害生徒のほうが数が多く、ひとりで直談判に行っても多勢に無勢となる。
「自分の子供がいじめの加害者だと思っている親なんていません。“うちの子はいじめていない”と反論され、解決に結びつかないケースも多いのです」(前出・徳岡さん)
※女性セブン2012年8月2日号