NHKの朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』が好評だ。前作『カーネーション』のように朝ドラ史上初の“不倫”が話題になることも、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)ばりの決めゼリフもない。
特別な“何か”があるわけではないのに、それでも放送開始から3か月半、63回目(6月13日放送分)までの平均視聴率は20.0%。『カーネーション』の19.1%をも上回り、9年ぶりの20%超を達成している。その人気はますます高まるばかりで、最近では22%超えも連発している。
番組の制作を手がけたNHKの岩谷可奈子プロデューサーは、こう話す。
「実は“焼け跡でサザエさん”を目指したいと、制作陣やスタッフに話してきたんです。とくにすごいことが起こるわけではないけれど、日常の些細な出来事だったり、感情だったりを丁寧に掘り起こしていく。視聴者のかたが、一緒に生活している気分を味わえるようなものにしたいと思っていました。ベタに見えるなかにも本当のドラマをつめこんでいるつもりです」
世代別に見ると、最も視聴率が高いのは、梅子と同世代で、当時を知っている70~80代の高齢者層だという。
「戦後を知らない世代は“戦後はつらくて悲惨だった”と思っている人が多いんです。でも、先輩に“あの時代も夢を持って普通に暮らしていたんだよ”“戦後の家族を描くなら、明るくしてね”といわれたことがありました。“焼け跡で、あんなに明るいはずがない”という批判の声も届きますが、そう思いがちなのは若い世代。お年を召されたかたは、あの前向きな雰囲気を懐かしいと思ってくださっているようです」(岩谷さん)
また、番組には「子供が好きで、一緒に見ています」という声も多く寄せられているという。“梅ちゃんの家族”をご近所気分で家族で見られるのも魅力のようだ。
「15分の間で必ず1回は笑えるシーンを入れるようにしています。子供には大きな流れはわからなくても、ときどき出てくるギャグが面白いということもあるみたいですね」(前出・岩谷さん)
※女性セブン2012年8月2日号