ライフ

部屋明け渡し時の清掃費請求 経年劣化には補修の義務無し

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「転居の際、住んでいた部屋の清掃費を請求され納得できません」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 2年間住んだ賃貸マンションを出るときの問題です。明け渡す場合、部屋を入居時の状態に戻すようにとのことなので、そのようにきれいにしたのですが、それでも家主から改めて清掃費などの費用(家賃の1か月分)を請求されたのが納得できません。応じないと、何か問題が発生しますか。

【回答】
 敷金を預けていませんか。敷金は、賃借権が終了し建物の明け渡し後、未払い家賃やその他の債務を控除した残額があれば返される条件付き債権です。このお金を預けてあって、まだ返却されていないなら、家主の請求は、敷金から1か月分差し引くという趣旨だと思います。

 その場合、この請求は実費の請求ではなく、家賃1か月分という定額での、いわゆる「敷引特約」が合意されていると思います。あなたに不満があれば、こちらから返還を求める手段を講じる必要があります。敷金がない場合は、家主は支払いを求めて、法的手続きを取るかもしれません。支払い督促、少額訴訟など、いずれも簡易裁判所による手続きが考えられます。その前に先方からの交渉があるかもしれません。

 さて、清掃費などの費用として家賃1か月分を請求することの正当性ですが、契約でどのような約定になっているかがポイントになります。退去時には清掃費等として1か月分支払うことが明確に約定されていれば、そのことを条件として契約に応じた以上、金額的に高額過ぎるということもないので、拒否できないはずです。

 しかし、そうした特約がない場合は問題になります。賃借人は、明け渡しに当たって原状回復義務があり、家具などの搬出のほか、掃除して引き渡すことが必要だからです。また、例えば棚を打ち付けた釘跡などの毀損・汚損があれば、補修義務も当然あります。ですが、経年劣化などの自然損耗まで、元通りにするまでの義務はありません。

 もし、家主から補修の要求があったら、その根拠の説明を受け、あなたに補修などの責任があることなのか、また金額が妥当か、納得を求めて交渉してはいかがでしょうか。

※週刊ポスト2012年8月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平を応援にきた女性。※こちらの女性たちは「体調不良って嘘ついて会社サボって観にきた」方ではありませんのであしからず…
《大谷翔平フィーバー!》東京ドーム前を埋め尽くす「OHTANI 17」のユニフォーム」、20代女性ファンは「体調不良って嘘ついて会社サボって観にきました(笑)」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロゴルフ・川崎春花、阿部未悠、小林夢果を襲う「決勝ラウンド3人同組で修羅場中継」の可能性
週刊ポスト
実際の告知は執行当日、1〜2時間前に行われることが基本となっている
《死刑当日告知裁判》「早朝、革靴の足音で “その瞬間”への恐怖が増す」死刑囚と接した牧師が明かす“執行前の実態”「精神的な負担から睡眠薬頼りに、顔は腫れぼったく面影が消える」
NEWSポストセブン
都内の高級住宅街に大きなあ戸建を建設中の浅野温子
浅野温子、都内高級住宅街に二世帯住宅を建設中 資産価値は推定5億円、NHK元アナウンサーの息子一家との同居で始まる“孫育て”の日々
女性セブン
再婚妻との子どもが生まれた東出昌大。杏はイラストで子どもとの日常を投稿
《東出昌大と新妻による出産報告も突然のYouTube休止》3児の母・杏がSNSに投稿していた「家族イラスト」の意味深な背景
NEWSポストセブン
女優の吉岡里帆(右)と蓮佛美沙子がタッグを組む
【吉岡里帆×蓮佛美沙子】能登復興祈念公演ふたり芝居『まつとおね』で共演 吉岡「蓮ちゃんは、まさに頼りになる『あねさま』」、蓮佛「見ているとハグしたくなるんです」
週刊ポスト
父親で精神科医の田村修容疑者(SNSより)
「供述に信用できない部分も…」ススキノ事件・田村修被告に執行猶予判決、求刑懲役10年を大幅に下回ったワケ
NEWSポストセブン
3つの出版社から計4冊の書籍が発売された佳子さま(時事通信フォト)
「眞子さんにメッセージを送られているのでは」佳子さま(30)のワイン系ツイードジャケットに込められた“特別な想い”《お二人の思い出の場でお召しに》
週刊ポスト
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵容疑者(62)
【独占入手】女占い師の自殺教唆事件で亡くなった男性の長男が手記「200万円の預金通帳を取り上げられ…」「学費と生活費をストップ」、さらに「突然、親子の縁を切る」 警察に真相解明も求める
NEWSポストセブン
2023年12月に亡くなった八代亜紀さん
《前代未聞のトラブル》八代亜紀さん、発売予定の追悼アルバムの特典に“若い頃に撮影した私的な写真”が封入 重大なプライバシー侵害の可能性
女性セブン
旭琉會二代目会長の襲名盃に独占潜入した。参加者はすべて総長クラス以上の幹部たちだ(撮影/鈴木智彦。以下同)
《親子盃を交わして…》沖縄の指定暴力団・旭琉會「襲名式」に潜入 古い慣習を守る儀式の一部始終、警察キャリアも激高した沖縄ヤクザの暴力性とは
NEWSポストセブン
キルト展で三浦百恵さんの作品を見入ったことがある紀子さま(写真左/JMPA)
紀子さま、子育てが落ち着いてご自身の時間の使い方も変化 以前よりも増す“手芸熱”キルト展で三浦百恵さんの作品をじっくりと見入ったことも
女性セブン