かつて熟女AVといえば体のラインが緩んだ名もなき女性主演のものばかりだったが、1998年に牧原れい子が、翌年に川奈まり子がデビューし、三十路の名花二輪とともに美熟女女優の時代は始まった。2003年には「熟女の総合デパート」のマドンナが、2006年には「美熟女専科」の溜池ゴローがメーカーとして発足。四十路のAV女優も当たり前の業界に成長した。
ビッグ2と呼んでいいこの2社を含め、美熟女に特化したメーカーは現在どのくらいあるのか。
「大手の通販サイトで扱っていない小さなメーカーも含めると20~30社でしょう。個人で経営しているようなメーカーもあって、それらの作品はショップに足を運ばないかぎり発見できません」(熟女AV専門誌編集長T氏)。
単体作品に出ている熟女AV女優の数は「150人前後」とT氏はいう。作品はおおむね「1000本売れればヒット」といわれている。
「昨年、四十路になって復活した往年のAVアイドル松本まりなの作品は3000本売れました。デビュー作、復帰作、といったものが特に売れます」(「溜池ゴロー」広報O氏)
月々の新作の販売本数は各社平均7本で「1本の値段が約3000円。売れたらメーカーの実入りが1500円。DVDはまず約1000枚プレスされ、平均すると1タイトルあたり700枚は売れていると思います」(T氏)
美少女ものに強いメーカーでも美熟女レーベルを持っている場合が多い。計算すると熟女ものだけで年間の推定売上高は50億円を下らない。
もちろんこれはインターネットでの動画配信やレンタルでの売り上げを除いた数字。それらを含めると、数千億円市場といわれるAV界の1割に迫るとも考えられる。
●文・沢木毅彦(AVライター)
※週刊ポスト2012年8月3日号