危険性を指摘されているオスプレイを、言われるまま受け入れる一方の情けない国・日本。「配備ありき」の前提を問い返そうとせず、アメリカの言い分をただ聞いてきては伝達するだけの防衛大臣。そんな森本敏大臣の姿を、7月初めにこんな言葉で喝破した人がいる。
「ガキの使い」
言い得て妙。胸がスッとする。それ以外にコトバが見あたらない。
東京新聞「本音のコラム」(2012.7.6)で見つけた「ガキの使い」というこの5文字。思わず膝を打った人は多いだろう。
コラムを執筆したのは、元外務省主任分析官・作家の佐藤優氏だ。複雑にからまりあった世界情勢の状況と課題とを喝破する、洞察力と言語力には定評がある。その佐藤氏の読書術を、初めてまとめた本がいよいよ今週刊行される。
「佐藤流『本の読み方』初公開!」という帯が目立つ、『読書の技法』(東洋経済新報社 1500円)だ。
佐藤氏は月に平均300冊、多い月は500冊以上の本に目を通すという。蔵書は4万冊に達する。そんな大量の本を、どうしたら限られた時間の中で読了できるのだろうか。
「重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ」(第一部「本はどう読むか」)と著者は書く。
読むだけでなく、本から得た知識を、切れ味のある道具として使うことはいかに可能なのか。本書を開くと、そうした問いに答えるユニークな目次が並ぶ。
・本には3種類ある
・速読の目的は、読まなくてもよい本をはじき出すこと
・基本書は3冊、5冊と奇数にする
・1冊を5分で読む『超速読』と、30分で読む『普通の速読』
・ノートは1冊主義
・レーニンの読書ノートに学ぶ
・筆者の漫画の読み方
・村上春樹『1Q84』をどう読むか……
「佐藤さんの著作は、これまでにたくさん出版されてきました。しかし、彼が日々実践している読書術を完全体系化して、その技法について具体的に解き明かしたのは本書が初めてです」と担当編集者・中里有吾氏。
「冒頭のカラーページで、佐藤さんの書斎や仕事場、本やノートの書き込みの実物写真を掲載したのも、初めてだと思います。哲学書から小説・漫画、教科書・学習参考書まで、あらゆる本の読み方を扱っていて、この10年間で出た読書術の本ではベストの1冊だと自負しています」
佐藤氏が日々、どのように本に立ち向かっているのか。膨大な知識を操り、状況を捉え、分析し、表現する力の秘密が、本書の中に見つかりそうだ。
●取材・文/山下柚実(作家)