カンボジアに帰化して男子マラソンで五輪出場を目指すも、国際陸連の決定によりその夢が潰えた猫ひろし(34)の騒動は記憶に新しい。今回の五輪開催国であるイギリスでも、五輪前に帰化した“にわかイギリス人”が多数代表に選ばれ、議論を呼んでいる。
とはいえ、帰化選手が五輪代表に名を連ねているのは、イギリスに限った話ではない。例えば卓球では、中国人選手が世界中に散らばって各国代表になっている。シンガポールの女子卓球代表は2人とも中国からの帰化選手だ。
五輪に初参加して以来60年間、純血主義を貫いていた韓国も、前回の北京五輪では中国人の女子卓球選手を帰化させ、団体戦で銅メダルを獲得した。もはや五輪の卓球は、中国の国内大会の様相を呈している。
金満国家がひしめく中東諸国は「アフリカから選手を金で買ってくる」と揶揄されるほどで、国籍の変更で1億円以上も受け取ったと噂されている選手もいる。
選手が国籍変更をするのは、母国では競争が激しくて出場できないからだが、なかには別の理由を挙げる選手もいる。エチオピア出身でトルコの女子陸上選手、エルバン・アベイレゲッセは「ここには私が必要とするサポートがある」とトルコを気に入り、トルコ人と結婚して国籍を取得し、その後、離婚した。
五輪は国の名誉をかけて国対国で戦う大会だったはずだが、いつのまにか個人対個人の競技になった。それが世界中に“猫ひろし”が増えた理由なのかもしれない。
※週刊ポスト2012年8月3日号