7月19日、天皇皇后両陛下は、日帰りで長野県下水内郡栄村を訪問された。この村は、昨年3月11日の東日本大震災の翌日(3月12日)に、遠方誘発型の震度6強の地震に見舞われ、死者3人、負傷者10人を出した被災地だ。両陛下は昨年4月から5月にかけて、宮城、岩手、福島の東北3県の被災地を慰問され、被災者の心に希望の光を灯されたが、栄村のご訪問は今回が初めてとなった。
「両陛下は東日本大震災の被災者たちと同じように、栄村の被災者をずっと心配されていました。一刻も早く訪れて励ましたいと願われていたのですが、結局叶わぬままでした。今回、ようやく慰問が実現し、両陛下は心から喜ばれていました」(宮内庁関係者)
だが、この日の日程は実にハードなものだった。東京駅から新幹線で越後湯沢駅に到着された両陛下は、車で片道約1時間をかけて栄村へと向かわれた。途中、車体が大きく揺れる山道を通らなければならず、体力を消耗する道程でもあった。1日の総移動距離は500kmを超えた。
現在、栄村の横倉仮設住宅では、47世帯、103人が避難所生活を余儀なくされている。住民たちは両陛下が到着される予定時刻の30分ほど前から屋外に出て待っていた。この日は温度計が最高33℃を示すほどのカンカン照りで、「頭がボーっとしてきた」という声があがり始めた。
熱中症を心配した警備員から「みなさん、まだ日なたに出ずに、日陰で休んでいてください」という指示が出るほどだった。
そんななか、仮設住宅に到着した両陛下だったが、“暑い”というそぶりを見せられることは一切なかった。陛下はお体のことで被災者たちに心配かけまいと、いつもと変わらぬ穏和な優しいお顔で歩み寄られ、ひとりひとりに声をかけられた。
「両陛下は直射日光が照り続けるなかを、帽子をかぶることもなく、歩かれていました。両陛下のお顔から、汗がしたたり落ちていましたが、おふたりとも一度もハンカチで汗を拭おうともされず、ひたすら被災者の心に寄り添われていました」(前出・宮内庁関係者)
この日、両陛下から励ましの言葉をかけられた80代の男性が感慨深げにこう話す。
「陛下に“この猛暑のなか、わざわざお越しいただいてありがとうございます”とお礼を申し上げると、“東京に比べれば、こちらは暑くはありませんよ”と笑顔でおっしゃるので、なんと忍耐強いかたなんだろうと感激いたしました。とにかくご自身のことより、私たち被災者のことを心配していただいて…。そのお気持ちが嬉しくて涙がこみあげてまいりました」
美智子さまに「お暑いなか、本当にありがとうございます」と感謝を述べた70代の女性もこういう。
「美智子さまは“ごめんなさいね。もう少し早くうかがいたかったのですが”と申し訳なさそうな表情を浮かべられて…。そのうえ“暑いので、どうかお体には気をつけてお過ごしください”という優しい言葉をいただきました」
こうして約50分間、両陛下は炎天下、被災者を励まし続けられた。
※女性セブン2012年8月9日号