食後に胃がもたれる、みぞおちが焼けるように感じるなど胃の調子は悪いのに、検査では異常なしと診断されるのが機能性ディスペプシア(胃腸症)だ。
ストレスや過労、睡眠不足などによる自律神経の乱れが関係しているといわれ、近年、患者が増加している。胃の症状に合わせて薬を選択するが、加えて食生活の改善や睡眠のコントロールなど生活習慣の見直しを行ない治療する。
機能性ディスペプシアは聞き慣れない病名だが、かつて「ストレス性胃炎」「神経性胃炎」と呼ばれていた。日本人の4人に1人は発症しているといわれ患者が増えている。
「食後に胃がもたれる」「食べ始めても、すぐに食べられなくなる」「みぞおちに差し込むような痛みがある」「みぞおちが焼けるように感じる」の4つのうち1つ以上が半年以上前から続き、最近3か月間に「週に数回、食後の胃もたれや早期飽満感が起きる」「週に1度以上、みぞおちの痛みや焼ける感じがある」という症状があって、胃カメラでも異常がなければ、この病気の疑いがある。
慶應義塾大学病院消化器内科の鈴木秀和准教授に聞いた。
「この病気は先進国特有で、タクシーの運転手や金融関係、国際線の乗務員など勤務時間が不規則な仕事についている人によく見られます。生活の乱れが自律神経のバランスを崩していると考えられるので、ストレスを減らし、決まった時間に腹八分目に食事を摂るなど規則正しい生活を送ることも大切な治療方法の一つです」
症状に応じて投薬治療を行なう。胃酸が多い、あるいは胃酸に過敏な場合は胃酸分泌を抑える薬を、胃の働きの低下には、動きを活発にさせる薬を用いる。心理的要因が強ければ、抗うつ剤などを使うこともある。現在この疾患の患者を対象に、胃の働きを改善するといわれる漢方薬「六君子湯(りっくんしとう)」の臨床試験が行なわれている。今年10月までエントリー可能だ。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年8月3日号