300万ドル(約2億4000万円)もの自身のボーナスを、「ポン」と社員に分け与えるという粋な計らいをした経営者がいる。中国のパソコン最大手「聯想集団(レノボ・グループ)」の楊元慶CEO(最高経営責任者)だ。
レノボ本社(米ノースカロライナ州)が明らかにしたところによると、同社は今年3月末現在、前年比で73%の増益を計上し、過去最高の業績を達成した。楊CEOはこの報酬として300万ドルを受け取っていたが、「レノボにとって記録的な1年だった」と述べて、社員の健闘に報いるために、このボーナスを1万人の社員に分配したという。
実際の話、楊CEOは、この1年間に受け取ったボーナスは520万ドルで、年俸は総額1400万ドルだったのだから、300万ドルはそれほど多いとはいえないものの「太っ腹」な経営者であることは間違いない。
レノボは昨年10月、米のパソコンメーカー「デル」とヒューレット・パッカード(HP)を抜いて、世界第2位のパソコンメーカーに躍進した。世界一はアップルだが、業界関係者は「レノボが今後2、3年で、世界一に躍り出ることも夢ではない」と分析している。
その根拠として、同関係者はレノボが2004年12月のIBMのパソコン部門を買収したのに続いて、昨年1月、NECのPC事業と合弁会社を設立すると発表し、2016年までにNECの個人用パソコン部門を完全買収する予定だからだ。
レノボはもともと中国政府のシンクタンク中国科学院計算技術研究所の技術者11人が1984年、北京のシリコンバレー「中関村」で興した会社だ。当初はそれほど目立った会社ではなかったが、1980年代末の初めて社員募集で、中国科学技術大学で修士号を取ったばかりの楊元慶氏が応募。創業メンバーの柳伝志会長(66歳)は楊氏を息子のように可愛がり、CEOに抜擢するなど異例の出世をさせた。
いまや「中国のビル・ゲイツ」とも呼ばれる楊CEOが柳会長から目をかけられて、経営に携わると、大手企業のPC部門を買収するなど、持ち前の経営の才能を発揮したのである。
楊CEOのモットーは「「明日のことなんか、だれにも分からない。だから、チャレンジしてみることが重要なのだ」というものだ。楊CEOにとって「300万ドルくらいは、チャレンジ精神ですぐに取り戻せる」ということなのだろう。スティーブ・ジョブズ亡きいま、彼をしのぐスケールの大きな経営者とでもいえようか。