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大御所ヘビメタバンド 生き残りの鍵はライブ、グッズ、副業

 音楽CDが売れていない。10年前の約半分だ。このまま音楽業界は寡占化が進み、衰退していくのか。日本の老舗ヘビーメタルバンドを参考に、作家・人材コンサルタントの常見陽平氏が、新しいミュージシャン像を描く。

 * * *
 皆さん、ヘビメタは聴きますか? 私、小学校の頃に日本の老舗ヘビメタバンド、LOUDNESSを聴いてから、ずっとヘビメタ好きです。ディープ・パープル、レッド・ツェッペリンなどの初期のハードロックから日本のヘビメタ、アーチ・エネミーやチルドレン・オブ・ボドムといった北欧のメロディックデスメタルまで幅広く聴きます。先日もアーチ・エネミーの来日公演に行き、大暴れし、ダイブまでしちゃいました。

 音楽産業の衰退が指摘されています。日本レコード協会のデータによると、2002年の音楽CDは生産実績ベースで約4318億円だったのが、2011年は約2085億円となっており、半減しております。ネットの普及によりYouTubeなどで無料で聴くことができること、携帯電話などの通信ツールへの出費が増えたこと、売れないがゆえに売れ筋に走り一部のアーチストだけが売れるという悪循環などが指摘されています。

 一方、ライブの動員は増えています。全国コンサートツアー事業者協会2011年は27,734,690人であり、この10年間で倍に近いくらい増えています。海外でも、マドンナが契約先をレコード会社からコンサートプロモーターに変更したことが話題になりました。MySpaceやYouTubeを利用したプロモーション、Ustreamによる配信なども話題になっています。

 さて、話はヘビメタに戻ります。先日、日本の老舗大御所ヘビメタバンド、ANTHEMのライブを観てきました。会場のクラブチッタ川崎はSOLD OUTにはならなかったものの、ほぼ満員。熱いファンが集結し、代表曲、新曲を織り交ぜ2時間半もの間、盛り上がりました。客席が明るくなり、退場を促す音楽が流れた後もファンは帰らず、予定外の3回目のアンコールまで飛び出しました。

 なぜ、この話をしたのかというと、このバンドのあり方に、ミュージシャンの未来を感じたからです。ANTHEMの名前を知らない人も多いかと思いますが、ライブをやると必ずほぼ満員になります。ヘビメタのファンはなかなか減らないですし、新しいファンも入ってきます。実際、会場も20代から50代まで幅広い観客で埋まりました。中高年の方がTシャツやキャミソールを着て、年老いた肌を見せつつも首を振り、拳を突き上げる様子はなかなか壮観です。みんな、3,500円のTシャツ、1,000円のリストバンドなどグッズを購入します。これらの利益率はかなり高いと言われており、チケットの売上や、ドリンク代のチャージバックの他に、利益に貢献します。バンドのプロモーションもブログや、メンバーのTwitter、YouTubeにあげた動画などで行います。

 さらに、メンバー自身が他の仕事をしている分、逆にこのバンドではやりたいことに没頭できます。例えば、ギターの清水昭男氏はジャニーズのアーティストへの楽曲提供をしており、ヒットを飛ばしています。そういえば、少し前ですがオリコン1位に輝き、大ヒットになったトラジ・ハイジ(国分太一と堂本剛)の「ファンタスティポ」は彼が作曲したものです。

 観客から期待されていることを愚直にやり続けているのもポイントです。川崎のライブではほぼ毎回、曲に合わせて火柱が立つようにセットが組まれています。東名阪と全てのライブに参戦する熱いファンもいることから、セットリストも少しずつ変えます。

 動員の数だけではなく、質、その場の熱量、ソーシャルメディアの活用、複数の手段で売上を上げる、副業推進。これぞ今後の音楽業界での生き残りノウハウではないでしょうか?

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