7月18日、長野で行われた『信州・まつもと大歌舞伎「天日坊」』には、1800人の観客がつめかけていた。ラストシーンで、中村勘九郎(30才)演じる僧侶・法策がたたずむなか、父親である源義仲が登場する。舞台は逆光で、その顔は見えない――
「幕が閉じて、カーテンコールのときです。勘九郎さんが“自分はお客様からパワーをもらいました。どうか父にもパワーを送ってほしい。せーので、勘三郎さん頑張って!といってください”と舞台上からお願いしたんです。もちろん、客席からは“勘三郎さん頑張って!”の大合唱。すると、袖口から“はーい”って。出てきちゃったんです、本人が(笑い)」(観客のひとり)
食道がんのため療養中だった中村勘三郎(57才)が、義仲のいで立ちで、水色の装束に黒烏帽子、白塗りにひげ姿でサプライズ出演したのだった。
「勘三郎さんの登場は息子の勘九郎さんにさえ伏せられていたので、観客も舞台上の役者も、みな騒然となりました」(歌舞伎関係者)
勘三郎は7月27日に手術することを明かし、「必ずまた帰ってまいります」と力強く宣言した。
「もう会場はスタンディングオベーションです。幕が閉じても“勘三郎!”という歓声がやむことはありませんでした」(前出・観客)
この「信州・まつもと大歌舞伎」は勘三郎にとっては特別な公演だ。昨年7月、引退危機とまでいわれていた突発性難聴から舞台復帰したのがここだった。
「勘三郎さんは、この地で高らかに闘病宣言することで“必ず病気に克つ”と自分にいい聞かせるとともに、留守を守る勘九郎さんにもエールを送ったんじゃないでしょうか」(前出・歌舞伎関係者)
※女性セブン2012年8月9日号