大津の中学2年生の生徒が自殺した問題を機にいじめが問題となっているが、“夜回り先生”こと、教育評論家の水谷修さんは、前進をみない問題の根っこを、
「学校や教育関係者の視点が間違っているのです」ととらえている。
「(教育関係者は)いじめを子供と子供の問題としかとらえていない。でもね、いじめは社会問題なのです。いじめがなくならないのは、社会のなかに歪みがあるから。落ちこぼれを出してしまう教育、不信感を生む学校システム、人を信じられなかったり、いつもビクビクしている子供をつくる家庭。社会が抱えている問題は、最終的に何かの形になる。そのひとつがいじめです」
たしかに大津で起きたいじめは、社会の歪みを映す鏡であったかもしれない。では、いま子供を守るために、大人たちにできることはなんだろう。
水谷さんの提言を、3つ紹介しておきたい。ひとつ目は、「組織防衛」を最優先する学校に、具体的な過失責任の取り方を導入することだ。
「いじめで子供が亡くなったら、学校長や担当教員を厳正に処罰すべきです。彼らは、子供を守れなかったのですから。過失に対して責任を取らない大人を、子供は絶対に信用しません」
ふたつ目は、教育行政に問題解決の考え方を転換するように求めている。
「学校現場だけでいじめを解決することは、絶対にできない。学校に、もっと『外部』を入れるべきです。そのために、いじめを人権侵害ととらえて相談を受けている法務省人権擁護局があるんです。教育委員会は、法務省の介入を拒否してはなりません」
3つ目は、いじめられている子たち、その親たちへのメッセージだ。
「逃げるだけではダメです。闘ってどこかで決着をつけないと、後々癒えない傷を残します。声をあげて、現実をできるだけ多くの機関、人に伝えましょう。警察や人権機関、市長、マスコミ、近所の人でもいい。いろいろな人間に知られれば、いろいろな立場で取り組んでくれるのです。
いま大津の事件によって、日本中の学校が、いじめに対して対処せざるを得ない状況に置かれています。夏休みの間に動くことができれば、2学期から学校が変わります。子供がいる親は、学校でいじめがあるかどうか、子供に聞いてください。たとえ自分の子供が当事者でなくても、いじめの事実があれば学校に知らせてください。それが自分を、自分の子供を守ることにつながるんです」
※女性セブン2012年8月9日号