昨今、食品やサプリメントとしてよく目にするのが、魚油に含まれる健康成分「EPA(エイコサペンタエン酸)」。EPAの効能についての発表も相次いでおり、大手水産・食品会社のニッスイが、7月23日都内で「血液・血管の健康を保つ機能性油脂『EPA』について」というセミナーを行なった。
今年4月には、消費者庁の食品の機能性評価モデル事業の結果発表で、EPAを含むn-3系脂肪酸は、「機能性について、明確で十分な根拠がある」として、対象11成分のなかで唯一、最高の“A評価”を受けた。これは、アメリカやEUでの評価とも一致している。
今年6月には、国立がん研究センターが「n-3系脂肪酸の摂取量が多いグループは、肝がんリスクが低い」と発表。さらに、昨年8月には、日本循環器学会では「血中のEPA/AA(アラキドン酸)比が低い人は、心血管死亡率が高い」と発表された。
EPAは、イワシやサバなどの青魚に多く含まれるn-3系高度不飽和脂肪酸の1種で、「血液をサラサラに保つ」、「中性脂肪を下げる」などの働きが知られている。今回、消費者庁がA評価したEPAの機能は、以下の3つ。
【1】心血管疾患のリスク低減
【2】血中の中性脂肪低下作用
【3】関節リウマチ症状の緩和
現在、サプリメントなどの栄養機能食品については、効果・効能の表示は認められていないが、今回、EPAを含むn-3系脂肪酸の健康機能について十分な根拠があると認められたと考えられる。
■血中のEPAが少ない人は死亡率が約3倍高い
最近、死亡リスク、とくに動脈硬化や心筋梗塞などの“心血管系疾患”による死亡リスクを予測する指標として注目されているのが、「EPA/AA比」。これは、血液中に含まれるEPAとAA(アラキドン酸)の比率のこと。AAは牛・豚の脂に多く含まれていて、血小板凝集作用や、炎症を起こしてしまうという働きがある。
1961年から続く福岡県久山町での疫学調査では、EPA/AA比が欧米人並みに0.25未満と低い(つまり血中のEPAが少ない)人は、0.75以上の人に比べて、心血管系疾患の発症率や死亡率が約3倍も高いことがわかった(2011年 日本循環器学会での発表)。
EPA/AA比は、魚をほとんど食べない欧米人は約0.1、日本人は平均0.5〜0.6とされているが、実は年代によってかなりの差がある。日本人でも、65歳以上は0.68と高いが、45〜64歳では0.51、45歳未満では0.28と、若い世代は欧米並みの値に近いのだ。
千葉県立東金病院院長・平井愛山博士は1980年から82年に、千葉県でEPAに関する疫学調査を行なった。その結果、漁村では農村に比べて魚を約3倍多く食べており、EPA摂取量に換算すると、漁村では1日2.7g、農村では0.9gと、漁村のほうが2倍以上も多いことがわかった。さらに、両地域での虚血性心疾患と脳血管系疾患の発症率を比較したところ、漁村のほうが明らかに低かった。
このデータから、EPAの医薬品化への取り組みが始まり、漁村と農村のEPA摂取量の差から、現在では医薬品としてのEPA投与量は1.8gとされている。