「塩麹」「甘酒」「ぬか」といった発酵調味料が大ブーム。なかでも人気の「塩麹」は注文数が、2011年12月に比べて2012年2月期には約24倍という数字も(インターネット通販「ケンコーコム」発表)。そんな時代の流れを、料理好き男子が見逃すはずがない。マニアックに物事を突き詰めるオトコの間で、手作り「床上手」が増殖中だ。
小寺良典氏(59歳・会社経営)は自他ともに認める料理好き。小寺氏が塩麹を使い始めたのは昨年のこと。
「酒飲みなので、つまみにいい、簡単料理を作るのですが、塩麹は素材の味を引き立ててくれる名脇役。生のほたて貝柱などをさっと和えておくと、塩をふるだけでは出ない、うまみが増すんですね」
この夏、小寺氏がやり始めたのは塩麹の手作りだ。
「元々オレが釣った魚をオレ作の皿に載せて食ってみたいという考え。実際、皿は作ったが、調味料ではオレ製のものはなかった。でも塩麹なら簡単で、麹と塩と水を混ぜ、作ってみると『育てている』感覚があって気持ちがいいんです」
事務所で麹と塩を混ぜて容器に入れ、1日1回撹拌をして12日間。でき上がった「オレ塩麹」はしょっぱさの中にまろやかさもある。
「チャーハンにみそ、ドレッシングにアンチョビなど、発酵食品をプラスすると素材のうまみが引き出されます。塩麹も発酵食品。肉を漬けたり、貝柱やたこには調味料のようにと、出番は多い。
昔は高級素材を買って自慢げに使ったりしましたが、最近は安い素材をびっくりするような味に仕上げる方が楽しいんです。塩麹は素材のうまみを引き出すので、そんなときには切り札になります」(小寺氏)
さっそく作ってくれたのは牛肉の塩麹漬けステーキ。トマトサラダの塩麹ドレッシングなど、素材のうまみが出た、ついつい酒が進むものばかり。
小寺氏の使った「オレ塩麹」作製用のキット。実はこの7月からウェブ販売が開始されているマルコメ『手づくり塩糀キット』だ。当初、女性や、子供も一緒に作ってもらおうと考えていたところ、予想外に男性からの人気が高いのだという。
「みそを造るのには麹菌の力を借ります。マルコメは麹を使う量は日本のトップレベル。その技術力で、塩麹を作る最適な麹を選び、キットにしたわけです」(マルコメ通販事業チーム・大原直木氏)
マルコメはみそが基本となる食育活動を行なっていたが、塩麹もその一環だという。「手作りすることで、麹のすばらしさを知って、安全安心な食材も体験していただきたい」(同前)
みそ造りで脇役だった麹を「主役」にした逆転の発想が思わぬ広がりを生んでいる。
「室温で1日1回撹拌するだけ。夏場なら10日ちょっとで作れます。麹は水分を管理し、吸水条件など完全にわかっているので、キット内容を混ぜ、規定量の水を入れるだけで失敗がありません」(同前)
ただ料理を作るだけではなく、菌という生き物を使った床で理科の実験をやるようなワクワク感……。床上手になって楽しむ男子が増えている。
※週刊ポスト2012年8月10日号