震災復興に際し、“絆”という言葉が流行語となったが、昨年度の復興予算約15兆円のうち6兆円が使われておらず、復興予算は、そのままシロアリ官僚たちの懐にも消えている。一体何に使われているのかを解説する。
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政府は復興予算捻出のために公務員の人件費削減を標榜している。本年度は、各省庁合わせて6000人以上の定数削減を行なう予定だという。ところが、総務省の審査結果を見ると、実際には合計1300人しか減っていない。なぜか。削減分を穴埋めするために新規事業を立ち上げ、そちらに人員を移しているからだ。
その新規事業の最たるものが、「震災復興」である。新設された復興庁の定員は120人だが、復興特会には、791人分の人件費が計上されていた。財務省出身の桜内文城・参議院議員(みんなの党)が呆れる。
「政府の言い分では、“職員の給与が復興特別会計に入っているのは、復興庁の職員と『折衝する』各省の職員の給与だから”だそうです。被災地に行く職員ならまだわかりますが、そうじゃない。霞が関の役人の給料なんです。本来は一般会計で計上すべき予算を、勝手に付け替えている」
総務省の行政管理局は、「定数削減は『片道の減』というもので、減らすのはあくまでも既存の事業の見直しで、必要があれば新規事業の定員を増やすこともある」と白状した。復興特会に109人分の人件費を計上した農水省文書課の職員は、本音を漏らした。
「復興予算で多少人件費を増やしましたが、農水省は定数を535人も減らしている。一番真面目に取り組んでるんです! 公務員制度改革で定員の削減をするからといわれて素直に削減してみたら、真面目にやっていたのはうちだけだった。他の省は新規事業をたくさん立ち上げてプラス・マイナスゼロにしているんですから。あとで気がついて、びっくりした」
なんともあけすけである。
復興特会のうち、人件費は総額131億円に上る。これには、通常の給与だけでなく、彼らの年金や福利厚生費用、さらには退職金(計7億円)まで含まれている。たとえば、環境省は職員の年金保険料として1.8億円を復興特会から出させている。
福利厚生費用には、様々な特典がある。傷病手当や結婚手当などに加え、スポーツクラブの利用料割引や、東京ディズニーランドの入場料割引まである。復興予算でディズニーランド割引?
文科省福利厚生室に確認すると、「スポーツクラブの割引には予算が使われているが、ディズニーランドの割引制度には国費の補助はない。広報活動の一環で割引してもらっている」と反論する。つまりは、「あれは役得であって税金流用はしてない」といいたいようだが、特権を大いばりとは呆れる。
■福場ひとみ(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2012年8月10日号