一度は経営破綻をした日本航空(JAL)だが、2012年3月期の最終利益はJALが過去最高の1866億円を記録。その一方、ライバルのANAも過去最高益ながら281億円止まり。生き残ったANAが“死に体”だったはずのJALに大きく水をあけられた。再上場はさらなる競争の激化を呼ぶ。
水面下のJAL、ANAの政・財・官界をも巻き込んだその戦いを本誌は両社関係者に加え、政界、財界などに幅広く取材を尽くした。両社のやり合いのニュアンスを読者にリアルにお伝えするため、本誌編集部内でJAL派とANA派に分かれてディベートを行ない、その様子を本原稿として構成した。くれぐれも明記しておくが、両社の当事者が実際に直接論争を展開しているわけではないが、内容はすべて取材で得られた情報である。
ANA派(以下、A):JALは人件費や経費などをカットしたというが、目に見えにくいところでサービスも削っている。例えばJALの岡山空港のラウンジは、カード会社と共同使用だそうだけど、まだ交渉している最中に見切り発車でお客さんを案内しちゃったものだから、カード会社とトラブルになってるらしいね?
JAL派(以下、J):(素知らぬ顔で)そんな話、聞いたことないけどなァ……。そう仰るだけあって、岡山空港のANAのラウンジは立派だもんね。ANAは最新型の787を最初に就航させたり、とりわけ岡山を大事にしている。でも、それって大橋洋治・会長の出身地だからでしょ。お客様より、社内事情を優先させるところが立派だね(ANA広報部:「岡山空港を充実させるのは同業他社や新幹線との競争環境を勘案しての判断であり、会長の出身地とは関係ない」)。
逆に成田空港のビジネスクラス用の出発ラウンジではマッサージを無料で提供している。ANAは有料らしいじゃない。
A:だけど、ハード面では断然ANAのほうが上。一部の飛行機にはフルフラットになるビジネスクラスシートを導入したし、世界で初めて温水洗浄機能付きの便座を入れた。このシャワートイレがすこぶる気持ちいい(笑い)。エコノミークラスも若干広くなったし、食事メニューをタッチパネルで選ぶシステムもある。
J:設備投資で遅れをとるのは経営破綻していたから仕方がない。だけどその分、サービス面ではJALのほうが勝っている。
A:どうかなァ。若くててきぱき動くCAはANAのほうが多いっていわれるよ。
それにJALは機内販売がしつこすぎ。稲盛会長が競わせるのが好きだからかどうかわからないけど、機内販売までフライトごとに競わせたり、ノルマを課したりしてるから、押し売り状態になっていると聞く。CAが飛行機から降りて真っ先にマネージャーに聞かれるのが、「今日の機内販売はどうだった?」っていう(JAL広報部:「採算意識を高めるため目標額を掲げて取り組んでいるが、ペナルティがあるようなノルマはない」)。
※週刊ポスト2012年8月10日号