大リーグ・マリナーズからヤンキースに電撃移籍したイチロー(38)だが、移籍の条件には、守備位置を右翼から左翼に変更、打順は下位打線、左投手の登板時にはスタメン落ちがあるという屈辱的な項目が盛り込まれていたとアメリカでは報じられた。
別の意味で屈辱的な声も上がっている。
「イチローが“お買い得”だったのは、集客効果があるからだ」
スタジアム関係者はそういって憚らない。
「2009年にオープンした新スタジアムはチケット料金が高いことが災いして、夏休み(米国は6~9月)のかき入れ時でも満員にならない日が多い。ライバルのレッドソックスが700試合超の連続満員記録を続けているだけに、イチローの加入で夏場に観客が増えることを期待している」
客寄せパンダとして役に立つ――そんな算盤勘定を隠そうともしない。何よりもハードな試練は「イチロー自身の変革だ」という声が強い。ヤ軍で禁止されている顎ヒゲを剃って入団会見に臨んだイチローは、今後の課題として「取材対応」を挙げた。
『イチローvs松井秀喜』(小学館101新書)を著わしたMLBアナリストの古内義明氏はこう語る。
「ヤ軍時代の松井がファンから愛され、地元メディアから『グッドガイ賞』を与えられたのは、彼が真摯にファンサービスや取材に臨んだから。
一方のイチローは、松井の受賞について『僕にはサイ・ヤング賞より難しい』と形容した。これをイチローらしいジョーク(サイ・ヤング賞は投手に与えられる)と許容するのは日本メディアだけです」
松井は本人曰く「ブルーカラーの仕事」を全うしたことでフロントや指揮官、チームメートの信頼を勝ち取った。
※週刊ポスト2012年8月10日号