ヨン様の『冬のソナタ』など、一群のイケメン韓国映画とは一線を画すコリアン凶暴映画にハマり、韓国の男なら生理的に好きになれるという日本女子がいる。彼女らの熱狂と韓国の男性の実態について作家の山藤章一郎氏が報告する。
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東京・新大久保のコリアンタウン。平日の午後、夏休みに入ったのか若い女性で通りも店もごった返している。職安通りの〈ドン・キ〉〈コリアプラザ〉さらにDVDショップ数店に入ってみた。
「韓流DVDコーナー」と丸文字ポップの躍るコーナーで、だが、〈コリアン凶暴映画〉はほとんど置いていない。大多数は〈少女時代〉などのK-POPアイドルグループのミュージックPVである。
韓国人の店員が韓国語で答える。
「一部の女の人に熱狂的なファンがいます。『チェイサー』とか『アジョシ』とか。いまはまだ、主流はウォンビンやチャン・グンソクが出てる『きみはペット』などですが、彼らの甘いムードが去って、韓国文化の底流を描く映画が爆発する予感があります」
棚に日本の本が積まれていた。表紙に『骨太コリアンムービー熱狂読本 韓国映画この容赦なき人生』(鉄人社)とある。これまでの男はみな韓国人だという、29歳・保険事務員・“み”氏が買う。『チェイサー』は、韓国で500 万人を動員した大ヒット映画である。韓国の総人口は5000万人。
10か月で、老人、風俗嬢など21人を殺害した事件を基に映画化している。デリヘルの女を監禁殺害する犯人と、元刑事の風俗業者の戦い。徹底的に救いがなく、ひたすら絶望にふさがれる。殺人に使うのは、ノミ、ハンマー。これを国民の10分の1が見た。
25歳・日本女・看護師の“か”氏、“み”氏と新大久保〈ソリ(SORI=音)〉に入る。
広いワンフロアが女性客で埋めつくされている。ほぼ100人。伝統茶、チヂミ、のり巻き、トッポッキなどが食べられる。店員は、15人ほど、みなイケメンである。彼らが注文の品を運ぶたびに、女客の視線が右に左に走る。
“か”氏、“み”氏と、茶を飲みながら、〈凶暴映画〉から〈男〉の話になった。なぜ、韓国店員の店に日本女が群れるのか。“み”氏が当然と言わんばかりに声をあげる。
「男らしい、優しい、頼もしい、尽くしてくれる。日本の男に爪のアカ飲ましてやりたいわ。私は四六時中でもそばにいたい質だから、毎日欠かさずメールや電話をもらってうれしいの。そのマメさ、たまらない。
どんなに忙しくても時間見つけて会いに来る。職場まで来てくれて、家まで送ってくれて。こっちが『疲れてるから今日はいいよ』っていうと『疲れてるから会いたいんだよ』って。女性には優しくしなければが、染みついてるの。会うたびに『ほんとに可愛い』『好きだよ』って。それに、ベッドがいいのよ」
日本人男は事の後さっさと寝る。だが韓国男は5分も10分も抱いていてくれる。
「愛情感じるよね。でも二股やられてた。今度からは絶対、避妊するんだ」
“み”氏に、恨みはない。
※週刊ポスト2012年8月10日号