素人投稿が人気の雑誌『ニャン2倶楽部』。伝説の編集長と称される夏岡彰氏がこの雑誌を創刊したのは、20年ほど前になる。「まさか20年も雑誌が続くとは……」と語る夏岡氏が振り返る。
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私はこの雑誌を1990年に創刊する前、ピンク映画の雑誌を作っていたんです。でも、撮影するモデルがニッコリパッチリしていて、そのリアリティのなさに不満を感じていました。
そんなある日、甲子園のチアガールを撮っているマニアの人たちと仲良くなったんです。写真を見せてもらうと素人は綺麗じゃないけど生々しさがあるなァと思った。
試しに素人投稿コーナーを別の雑誌に作ったら投稿がくるわくるわ。当時、使い捨てカメラが普及していたのも大きかった。写真を撮ったはいいけど現像できない。ならば編集部にカメラごと送ってしまおう、と。これはブームになると思って会社に企画書を提出しました。
男性からの投稿には、自分のパートナーを辱めたい、さらし者にしたいという意味合いでのサディスティックな興奮もあるだろうし、ピュアに見れば、自慢したいとか、こんなことまでしてくれるんだぞっていう「見せたい願望」もあるんでしょう。
でもこの20年、色んなことがありましたよ。
女教師と名乗る女性からの投稿をよく頂いていたんですが、取材で彼女の家を実際に訪ねてみると八百屋のおかみさんだった。エッチな時間だけは変身したかったんでしょう、ある種の架空の存在にね。
「自分の妻が掲載されている」といって編集部に乗り込んできた方もいました。「妻が浮気している証拠をやっと突き止めた」と。でも目線のない生の写真を見せてあげると「あっ、違うわ」だって。まずは自分の妻に聞いてほしかった。
苦労も絶えないですが、それでも編集に携わり続けたのは、読者との関わり合いに魅力を感じたから。投稿者から、今度こういうことをしてみたいんですけど、と相談があって、それならこんなプレイにしたらどうか、と提案する。奥さんはもっと生足を見せたほうがいいですよ、とね。
気付いたら、読者との共犯関係ができちゃっていたんですね。
※週刊ポスト2012年8月10日号