家電量販店の業界再編の動きが激しさを増している。そもそも急成長を遂げてきた要因は、その価格の安さ。それだけに競合店舗の価格競争は激烈だ。家電業界に詳しいJMR生活総合研究所代表の松田久一氏が語る。
「価格設定は流動的にして、他店より少しでも安く売れるようにしています。店員を調査に出すなどしてライバル店の価格には常に目を光らせている。とくに売り上げの大きい土日は、他店の方が安ければ昼でも夕方でもすぐに価格を下げます」
他店の安い値段が書かれたチラシを持っていけば、その価格まで下げるというサービスもそのひとつ。このような価格設定を可能にしているのが、ビックカメラとコジマのケースでみたようなスケールメリットだ。大量仕入れによって仕入れ値を下げ、他店より安い価格で販売することで売り上げを稼ぐ。
「実はスケールメリットで最も大きいのはメーカーからのリベートです。大量に仕入れて販売すればメーカーが販売報奨金を出す。その分値引きも可能になり、売り上げアップと利益の確保につながる」(流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏)
すべての商品をえようとすれば在庫リスクが高まるため、限られた売り上げ上位の商品に力を入れるのも業界では常識だ。こんな手法もある。
「他店が扱う人気商品に性能面で見劣りしない商品を“重点商品”に設定して大量に仕入れることでリベート交渉をする。さらに他店よりも安い価格設定にし、『○○のメーカーの商品と性能は同じ』といえば買ってもらえる。リベートももらえるので一石二鳥です」(量販店関係者)
機能をシンプルにしたり、商品のカラーを指定するなど、オリジナル商品をメーカーに開発してもらうPB(プライベートブランド)化も進む。
「例えば高齢者が操作しやすいように、操作ボタンを大きくすることや、あまり使わない機能を省くことをメーカーに提案する。こうしたオリジナル商品を何千台、何万台単位で仕入れてコストを下げつつ、他社では買えない商品としてアピールする。今はこれが主流です」(前出・鈴木氏)
※週刊ポスト2012年8月10日号