スペインを破ったサッカー男子オリンピック代表と、世界王者として金メダルを狙うなでしこジャパン。日本中を熱狂させる男女のサッカーオリンピック代表だが、サッカーとは別なところでも欧米メディアから注目を集めている。それは日本からロンドンへ向かう際に利用した飛行機の座席に関する話題だ。
7月16日未明に、羽田空港からパリ行きの同じ便で現地入りした両チーム。出発前には男女一同が勢揃いして記念撮影をしていたが、その後、乗り込んだ席は男子が「ビジネス」クラスなのに対して、なでしこは「エコノミー」クラスだった。これには、なでしこのエース・澤穂希選手(33才)が、こう語っている。
「年齢的に見たら、私たちが(男子より)年配だから、逆でもよかったと思うけど…」
笑顔でコメントしていたものの、本音は「どうして? 差があるの?」という呆然とした思いだったことだろう。
基本的にJOC(日本オリンピック委員会)では、柔道代表など体が大きい選手を除き、大会会場入りの際の飛行機の座席は、原則エコノミーと定めている。しかし、サッカーについては、プロ選手が参加しているということもあって、JFA(日本サッカー協会)が資金援助している。JFAは今回の待遇格差についてこうコメントしている。
「日本サッカー協会の基準がある。今回の移動便の席は、それに従って決めたこと」
この基準とは、1996年のアトランタ五輪に男子サッカー代表が出場した際に「男子はビジネス、女子はエコノミー」と決められたもので、その後、女子に関する議論がないまま、16年間、同規則が適用され続けてきた。見直しについては、JFAの大仁邦彌会長が出発前に「来年には規約を見直す」と語るにとどまっている。
ちなみに今回、なでしこも通常のエコノミーではなく、ちょっとグレードアップしたプレミアムエコノミーという配慮はされていたが、その差は歴然だ。
なでしこ同様の事件がオーストラリアのバスケットボール代表でも起こっている。女子チームは前回の北京五輪で銀メダルを獲得して、今回も金メダル候補といわれているが、男子は女子ほどの成績を残していない。にもかかわらず、ロンドン入りの際、男子はビジネスで、女子はエコノミーだった。これには同国のスポーツ相が、「男女とも等しく国を代表している。異なる座席クラスにすべきではない」と批判するほど大きな波紋を呼んでいる。
熱戦が繰り広げられているロンドンでも、この“なでしこ座席事件”に、日本の他の競技関係者が敏感に反応しているという。
「女子柔道で松本薫選手(24才)が金メダルを獲得したことで、柔道関係者は、“松本の帰国便はビジネスにしないとヤバいかな?”“どんな空気なの?”なんて、報道関係者に世論を探っているようです。頑張った選手が聞いたらガッカリするような話ですよね…」(スポーツライター)
※女性セブン2012年8月16日号