長梅雨明けて、やっぱりやってきたウンザリする蒸し暑さ。ただでさえ今年は、脱原発やら電気料金の値上げやらで盛り上がる節電ムードに、ひたすら忍耐の夏なのだが、気温はうなぎのぼり。最高気温39℃超えの場所も出始めた。
聞けば、ここ数年の日本の暑さは世界でも異常というではないか。そこで本誌は提案する。最悪を知れば気分も楽になる――世界で最も暑い国のリポートだ。
夏の気温はなんと50℃以上、湿度は80%を軽く超える。サウジアラビアの向こう岸に位置する小国「ジブチ」である。自衛隊初の海外活動拠点が設置されたことでも有名だ。
ここの暑さをお伝えするとすれば、例えば息をはぁーと指先にかけるとその息すら涼しく感じられるほど(体温の方が低いため)。外務省のリポートによると、ジブチ上空では3000フィート(約1km)の高さでも、機外の気温は30℃超えというから、その暑さたるや想像を絶する。
前駐ジブチ大使の新美潤氏(52・現外務省参事官)は、壮絶な酷暑生活をこう振り返る。
「週に1度、隣国エチオピアから野菜を売りに来るんですが、並べた端からしおれていくような有様です」
大使にして、この生活。予告なしで断続的にやってくる停電。家ごとに自家発電機があるが、調子のよしあしも悩みの種で、冷蔵庫も使い物にならない。さらには水道水は塩水……。
外務省では開発途上国に多くの大使館を置いているが、その中でもジブチの大使館は最も暑く生活が劣悪だという。
この国で、車に乗っている時に窓を開けるのは自殺行為。体温より高い熱風の直撃を防ぐために、窓という窓はめったなことでは開けてはならないという。
「プール? お湯ですよ。在任中、エチオピアの日本大使館から派遣された医務官に健康診断してもらった時は、私を含め、大使館員全員、脱水症と診断されましたよ」
あまりの暑さにこんなことも。
「夏期には蚊とハエがいない。暑さのせいで生息できない(笑い)」
暑さ対策の“現地パワーめし”は、「めったなことでは口にできない貴重品・ラクダの肉と乳だった」という新美氏が、教訓として身に染みた本気の暑さ対策は?
「早朝、日の出前から活動して、日中はゆっくり昼寝。そしてまた夕方から働く。それと、公共の“冷えている場所”に行くしかない。ジブチシティでは、たった2軒しかない小さな外国人向けのスーパーマーケットに町中の人が集まっていました。そして、2軒しかないまともなホテルのロビーに行くと、各国の大使が、ほとんど顔を揃えていました」
※週刊ポスト2012年8月10日号