『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を発信する。8月3日配信の26号では森永卓郎氏が、民主党と自民・公明党との間に生じる“政策面での亀裂”について、持論を展開する。
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消費税率の引き上げで一致結束する民主党と自民・公明党の間に、政策面での亀裂が走り始めた。7月25日に都内で講演した民主党の前原誠司政調会長が、「昔の政治に逆戻りするのかという感じがする。公共事業をまたばらまく先祖返りだけは、絶対に認めてはいけない」と自民党や公明党の政策を厳しく批判したのだ。
批判の矛先は、自民党や公明党が次期衆院選の看板政策として打ち出した公共事業の拡大策だ。自民党は、「国土強靱化基本法」を制定して、今後10年間で民間投資を含めて200兆円の事前防災や減災の事業を行うとしている。公明党も自民党と歩調を合わせる形で、「防災・減災ニューディール推進基本法」を制定して、10年間で100兆円の事業を展開するとしている。自民、公明は、少なくとも毎年10兆円もの防災事業を推進するというのだ。今年度予算の公共事業費は5兆3000億円だから、この事業費がいかに巨額であるか分かるだろう。だから、前原政調会長の怒りも理解できないわけではない。自公政策は、民主党が掲げた「コンクリートから人へ」という基本政策を完全否定するものだからだ。
ただし、民主党にも責任の一端がある。そもそも、今回の社会保障と税の一体改革で、消費税引き上げ分を実質的に全額社会保障に充当することをしなかったからだ。昨年6月に民主党がまとめた「社会保障と税の一体改革成案」では、「改革全体を通じて、2015 年度において、機能強化(充実と重点化・効率化の同時実施)による追加所要額(公費)は、約2.7 兆円程度と見込まれる」としている。消費税を10%に引き上げることによる増収は13.5兆円だ。つまり、今回の消費税率引き上げで純粋に新たな社会保障財源として使われるのは、2兆7000億円に過ぎず、10兆8000億円もの「余裕資金」を作りだしてしまった。そこに自民党と公明党がつけ込んだ形になっているのだ。
もちろん、自民党や公明党は、防災・減災のための事業を、消費税財源でやろうと言っているわけではない。しかし、お金に色がついているわけではないので、結果的には消費税を余分に引き上げて、その分で公共事業をやろうとしているのと同じことだ。