ライフ

芥川龍之介 自殺背景を脳科学者が分析「特殊脳」との指摘も

『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)に出演中の脳科学者・澤口俊之さんが作家・芥川龍之介作品を脳科学の観点から分析した。以下は澤口氏の解説だ。

 * * *
 さて、芥川龍之介を脳科学的にみると、彼は典型的な「卓越脳」の持ち主だったといえます。「卓越脳」とは、学術用語で非常に高い知能(知能指数IQ)を持つ人の脳のことをいいます。

 幼いころから成績優秀で旧制第一高等学校(現東京大学教養学部)に無試験で入学したエピソードや、その理知的な作品からみて、彼の知能指数IQは抜群に高かったことがわかります。

 同時に、芥川は偉人の脳シリーズでお話ししてきた「特殊脳」(傑出した理系の才能など、独特な脳)の持ち主だったとも推測できます。これまで取り上げてきたアインシュタインや坂本龍馬は、「特殊脳」の持ち主ではあっても、それほど高いIQを持っていなかったと考えられることを紹介しました。一方、前号の吉田松陰はその逆で、高いIQを持ちながらも、「特殊脳」の持ち主ではなかったと推測できると記しました。

 さて、結論からいうと、芥川龍之介の場合は、高いIQを持ち、かつ強い不安感を抱きやすい脳、すなわち軽い「特殊脳」の持ち主だったと考えられます。

 芥川は、35才という若さで服毒自殺したことで有名です。ところが、知能(IQ)は、 高いほど自殺率(自殺未遂も含む)が低いというデータがあります。そのため、芥川の自殺は脳科学的にはやや不思議なことに感じられます。

 では、彼の自殺を「不安」という観点からみるとどうでしょうか。

 芥川は、胃腸の病気や不眠に悩まされていたようですが、おそらく「不安」によるストレス性のものだったと思われます。芥川の自殺の理由は、彼が抱き、書き遺してもいた「ぼんやりした不安」によるものといわれています。また、彼の遺書には、〈僕はこの二年ばかりの間は死ぬことばかり考へつづけた〉とあることから、彼が「ぼんやりした不安」を抱き続け、自殺を長期的に計画していたことが伺えます。

 このように、不安感がある一定のレベルを超えると、脳内のアセチルコリンやダイノルフィンなど、記憶力や苦痛を和らげることに関係する神経伝達物質の量が減少してしまいます。このため、脳が通常とは異なる状態になり、自殺しやすくなってしまうことがわかっています。どうやら芥川の脳はこうした状態にあったといえそうです。

※女性セブン2012年8月16日号

関連記事

トピックス

公選法違反で逮捕された田淵容疑者(左)。右は女性スタッフ
「猫耳のカチューシャはマストで」「ガンガンバズらせようよ」選挙法違反で逮捕の医師らが女性スタッフの前でノリノリで行なっていた“奇行”の数々 「クリニックの前に警察がいる」と慌てふためいて…【半ケツビラ配り】
NEWSポストセブン
「ホワイトハウス表敬訪問」問題で悩まされる大谷翔平(写真/AFLO)
大谷翔平を悩ます、優勝チームの「ホワイトハウス表敬訪問」問題 トランプ氏と対面となれば辞退する同僚が続出か 外交問題に発展する最悪シナリオも
女性セブン
日本一奪還に必要な補強?それともかつての“欲しい欲しい病”の再発?(時事通信フォト)
《FA大型補強に向け札束攻勢》阿部・巨人の“FA欲しい欲しい病”再発を懸念するOBたち「若い芽を摘む」「ビジョンが見えない」
週刊ポスト
2025年にはデビュー40周年を控える磯野貴理子
《1円玉の小銭持ち歩く磯野貴理子》24歳年下元夫と暮らした「愛の巣」に今もこだわる理由、還暦直前に超高級マンションのローンを完済「いまは仕事もマイペースで幸せです」
NEWSポストセブン
ボランティア女性の服装について話した田淵氏(左、右は女性のXより引用)
《“半ケツビラ配り”で話題》「いればいるほど得だからね~」選挙運動員に時給1500円約束 公職選挙法で逮捕された医師らが若い女性スタッフに行なっていた“呆れた指導”
NEWSポストセブン
傷害致死容疑などで逮捕された川村葉音容疑者(20)、八木原亜麻容疑者(20)、(インスタグラムより)
【北海道大学生殺害】交際相手の女子大生を知る人物は「周りの人がいなかったらここまでなってない…」“みんなから尊敬されていた”被害者を悼む声
NEWSポストセブン
医療機関から出てくるNumber_iの平野紫耀と神宮寺勇太
《走り続けた再デビューの1年》Number_i、仕事の間隙を縫って3人揃って医療機関へメンテナンス 徹底した体調管理のもと大忙しの年末へ
女性セブン
チャンネル登録者数が200万人の人気YouTuber【素潜り漁師】マサル
《チャンネル登録者数200万人》YouTuber素潜り漁師マサル、暴行事件受けて知人女性とトラブル「実名と写真を公開」「反社とのつながりを喧伝」
NEWSポストセブン
白鵬(右)の引退試合にも登場した甥のムンフイデレ(時事通信フォト)
元横綱・白鵬の宮城野親方 弟子のいじめ問題での部屋閉鎖が長引き“期待の甥っ子”ら新弟子候補たちは入門できず宙ぶらりん状態
週刊ポスト
大谷(時事通信フォト)のシーズンを支え続けた真美子夫人(AFLO)
《真美子さんのサポートも》大谷翔平の新通訳候補に急浮上した“新たな日本人女性”の存在「子育て経験」「犬」「バスケ」の共通点
NEWSポストセブン
自身のInstagramで離婚を発表した菊川怜
《離婚で好感度ダウンは過去のこと》資産400億円実業家と離婚の菊川怜もバラエティーで脚光浴びるのは確実か ママタレが離婚後も活躍する条件は「経済力と学歴」 
NEWSポストセブン
被告人質問を受けた須藤被告
《タワマンに引越し、ハーレーダビッドソンを購入》須藤早貴被告が“7000万円の役員報酬”で送った浪費生活【紀州のドン・ファン公判】
NEWSポストセブン