フォークをグニャリと曲げ、心の中で唱えた数字をズバリ言い当てる――。SMAPのキムタクが「すげー」と驚愕し、黒柳徹子が目を丸くして『徹子の部屋』に2度も呼んだ大人気の超常現象パフォーマーが、本人も予知できなかった厄介事に頭を抱えている。
今、テレビに引っ張りだこの“ダイゴ”といえば、「うぃっしゅ!」でお馴染みの竹下登・元総理の孫DAIGOのことではない。「すべての超常現象は科学で再現できる」といい、心理学のテクニックやマジック的なトリックを駆使した超常現象パフォーマンスで視聴者を魅了するメンタリストDaiGoだ。メンタリストという独特の呼称、黒柳すら驚嘆させるパフォーマンス……。今や週に3、4日は各局バラエティ番組に出演する視聴率男である。
その人気絶頂のDaiGoが突如トラブルに見舞われた。なんと、彼の代名詞「メンタリスト」の肩書きを剥奪されそうなのである。 所属するメンタリズム研究会「スリーコール」代表の村山淳氏が憤る。
「先日、DaiGoのファンから“8月に公開予定の映画『メンタリスト響翔』に出ているの?”と問い合わせがあったが、寝耳に水の話。不審に思って調べてみると、日本メンタリスト協会なる団体の会長だという男性が主演していたんです。メンタリズムやメンタリストという言葉を日本で広めたのはDaiGoなので、本人は“勝手に使われた”と驚いていました」
協会はDaiGoが話題になり始めた今年2月に立ち上がった団体だが、DaiGoとは何の関係もない。会長はハイパーメンタリストを名乗る藏本天外氏で、物理学の観点から心理学を解析した独自理論「物理性心理学」を提唱し、自己啓発テキストなどを販売している。
困惑したDaiGoは「メンタリスト」などの名称の商標登録に動いた。しかし、時すでに遅し。この4月に藏本氏が先に登録申請を出していたのである。
申請されていたのは「メンタリズム」、「メンタリスト」、「メンタリスト藏本天外」、そしてDaiGoを模したのか、「TENGUY」の4つ。早ければこの8月にも登録されるという。
商標登録に詳しい弁理士の平野泰弘氏がいう。
「商標登録されると、たとえば映画やテレビで名称を使う場合は使用料が発生するし、商標権者は第三者の使用禁止も求めることもできます。原則、早い者勝ちで、トラブルも少なくない」
過去、俳優の加勢大周が芸名の商標権を持つ前事務所から名前の使用を禁止され、裁判に発展したことがワイドショーを賑わせた。
今回、登録されれば、過去にさかのぼって適用されることもあるため、多数の本を出しているDaiGoにとっては痛手だ。そもそも名称を使えなければ、「メンタリストDaiGo」は、ただの「DaiGo」になる。そうなると、竹下総理の孫のDAIGOも黙っていないのでは……。
DaiGoに聞いた。
「日本ではこの名称は僕たちが広めてきました。僕と藏本氏では考え方も違うし、広く知られている僕のメンタリズムの定義自体が崩れてしまう。商標登録が完了する前に、特許庁に意見書を提出する予定です」
一方の藏本天外事務所にも取材を申し込んだが、「担当者が出張中のためお答えできない」と、締め切りまでに回答を得られなかった。
「メンタリスト」の呼称を勝ちとるのはどちらとなるか。こればっかりは、超常現象パフォーマンスではどうにもならないようだ。
ちなみに「うぃっしゅ!」のほうのDAIGOは「(トラブルに)巻き込まれたくないのでノーコメント」(所属事務所)とのことでした。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号