消費税増税法案の参院採決と内閣不信任案提出を控え、永田町で繰り広げられる「与野党パワーゲーム」は激しさを増してきた。
しかし、政権の延命を図る野田民主党政権、それに接近と離反を繰り返して揺さぶりをかける自公、そして「反増税」で政権打倒の姿勢を露わにする小沢新党(国民の生活が第一)、みんなの党などの「第3極」は、解散風が強まる中、そのアンテナを「西」に向けている。橋下徹・大阪市長が率いる「大阪維新の会」の国政進出動向だ。
選挙区情勢分析に定評のある政治評論家・野上忠興氏が指摘する。
「各メディアの世論調査で民主党の支持率が凋落しているのに、自民党も支持を伸ばしていない。野田政権への批判の受け皿は自民党ではなく、維新の会などの第3極になっている。維新の会が独自候補を立てた場合、二大政党の候補を押しのけて当選する可能性のある選挙区が100近く出てくる情勢です。連携するみんなの党、減税日本などと合わせると、橋下氏が掲げた『衆院200議席で政権奪取』も十分にあり得る」
関西選出の民主党中堅議員は苦しい本音を漏らす。
「自民との一騎打ちならば負けても惜敗率でバッジを守れるかもしれないが、維新が割り込んでくれば厳しい。候補の名前さえわからないから、現時点では選挙戦術を練ることもできない」
同じく関西選出の自民党議員は、「橋下は全選挙区に候補を立てると宣言したが、間に合うのか。準備が整わないうちに総選挙になればいいのだが……」と早期解散に望みを繋ぐ。
このように、国政では結託して消費税増税、原発再稼働、オスプレイ配備に奔る二大政党の代議士たちが、維新の会が擁立する“姿の見えない刺客”に戦々兢々としているのだ。国民の声を無視した談合政治への「しっぺ返し」に怯える様は自業自得というほかない。
が、ここには別の問題もある。「名前もわからない候補」が当選確実ということは、有権者にとって大きな不安といえるだろう。本誌はA4用紙25枚からなる「名簿」を入手した。
そこには「番号」「クラス」「性別」「氏名」「年齢」が記され、「住所」もある。「備考欄」には、「○△市議」「会社員」「弁護士」「主婦」などの肩書きが記載されている。コピーやファックスが繰り返されたせいか、文字が潰れて判読できない箇所が散見されるが、総人数は888人(男性785人、女性103人)。最高齢は72歳、最年少は25歳である。
この名簿の存在を知るジャーナリストが語る。
「橋下氏が塾長を務める『維新政治塾』の塾生リストです。同塾は今年初めに募集が開始されて3326人の応募がありましたが、複数回の受講と選考を経て、888人に絞られた。この塾生の中から次期衆院選での維新候補者の大半が選ばれると見られています」
維新の会事務局に「名簿」を提示すると、「多くはいえないが、当会が作成したものではない」と否定したが、「(そうした名簿が出回っていることについて)調査しなければならない」とも付け加えた。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号