生命保険の年間払い込み保険料は世帯平均で約50万円。30歳から60歳まで払い続けたら、なんと1500万円─―。マイホームに次ぐ高額商品なのだが、ムダな保障で“武装”し過ぎて、「保険貧乏」に陥る人が多いのが現実である。
いまでこそ外資系や損保系、通販系、ネット系など新規参入の事業者が増えたが、かつての生保業界は日本生命や第一生命など大手国内生保がほぼ独占。その主力商品である「定期特約つき終身保険」は個人保険契約高の約25%を占める。40~60代では特に契約者の割合が多い。
実は、この種の保険が曲者だ。
多くの契約者はその「終身」というネーミングのせいで、大事な保障が一生涯続くものと誤解している。40歳で死亡時3000万円の保険に入った人が、「一生涯、死んだら3000万円が支払われる」と考えているなら、それは間違いであるケースが多い。実際は100万円程度の保険金がもらえる終身保険以外の2900万円は定期特約という期間限定の“おまけ”の塊にすぎず、60歳など、決められた時点で消滅する。
ベストセラー『生命保険の「罠」』(講談社刊)の著者で、「保険相談室」代表の後田亨(うしろだ・とおる)氏が指摘する。
「生保の営業担当者の説明不足が誤解を招く大きな要因です。一生涯続く保障は100万円程度に薄く設定しているのですから、あらかじめ“働き盛りの方が万が一に備える保険”と説明すべきです。また、お客様も自分の都合の良いように記憶しがちなところもあり、この件では保険会社に多くの苦情が寄せられています」
家族に遺せると思っていた金額が、実際ははるかに少なかった――。死後に誤解を悔いても、悔やみきれない。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号