昨年の震災、原発事故をはじめ、消費税増税や、年金などの社会保障制度の問題…。将来を考えれば、不安なことばかり。節約して備えなければと思っている人が多数派だろう。その一方で、稼ぎは少なくてもお金を使い切る女性もいる。貯金ゼロの“貧困女子”が、節約や蓄えるということに背を向ける理由とは?
バツイチで都内でひとり暮らしをする近藤恭子さん(仮名・44才)は派遣社員で、月収20万円ほどあるが、貯金はほとんどない。昨今の節約ブームにうんざりといった表情でこう話し始めた。
「人により価値観が違うと思いますけど、お金があっても幸せじゃない人っていると思うんです。将来のことを考えたら、いまが充実しているほうが大切なんじゃないかって」
収入のほとんどは、趣味に費やしている。
「結婚していたころから、福山雅治のグッズを集めていて、それだけでトータルで100万円以上は使いました。私はハマるとファンになる前の、その人のことまで知りたくなっちゃうので、雑誌の記事や、テレビ番組を録画したビデオテープ(段ボール1箱5万~6万円)、ラジオのカセット(1回の収録で1000円のものも)といったものをオークションで落としまくりました。
コンサートは1か所や2か所では飽き足らないので、できる限り全国を回ります。チケットが取れなければ、これまた高いですがオークション頼みで」(近藤さん・以下同)
こうした浪費生活を10年前から続けながら数年前までローンの返済にも追われていた。
「そもそもは元夫がきっかけ。元夫の職場で投資目的の不動産を買うのが流行っていて、その勢いで1800万円の土地を買ったことです。海にも山にも比較的近い場所で駅から徒歩7、8分という土地。区画整理がはいるから値段が上がるといわれて、そのときは資産になると思っていました」
しかし、予想に反して価値は年々下がり続け、いまやその価値は300万円に。ほかにも、400万円で買った自動車のローンも返済しなければならなかった。土地や車のローン返済は終わったものの、趣味に費やしたものの支払いは、ほとんどをリボ払いにしているため、現在もその返済が続いている。
44才という年齢で貯金がほとんどないことにも不安はない。将来への期待や夢などもないからだ。
「60才ぐらいになったら自給自足でもすればいいかな。過疎地で暮らせば居場所が見つかるかもしれないって。楽天的すぎますかね。この夏休みは、2泊3日で登山に行くんですが、費用は10万円はかかる。今月の給料はこの10万円と家賃を払ったら2万円しか残らない。でも、今度のカードローンの支払いは多分6万円ぐらい。4万円足らないんだけど。まぁダメだったらプラチナのアクセサリーを売るかって思ってる。持つべきモノは“バブルの遺産”かなって思ってます(笑い)」
そんな近藤さんだが、昨年の震災で、思うところがあった。
「震災以降、現金を100万円つねに手元に置いているという友人がいますが、あのときって、店にモノがなかったじゃないですか。お金があっても買えなかった。でも、地方から水を送ってくれた人がいて、そのときに、お金より人だと思ったんです。だから、私はお金を貯めるぐらいなら、むしろ使おうと。使うなら農業を習ったり、自給自足をやるための勉強もしたいなって思っています」
※女性セブン2012年8月16日号