同じ物を食べても太る人と太らない人がいる。これを分けるポイントが肥満関連遺伝子と呼ばれるもの。多くの日本人に関連する肥満遺伝子は10種あり、これらは個人の基礎代謝量に関連している。標準基礎代謝と比べて少ない分のカロリーを減らすことで、効果的なダイエットが可能だ。現在10種まとめての検査が可能で、テーラーメイド医療に役立つと期待されている。
遺伝子研究では、特定の体質に関して一塩基多型(SNP)と呼ばれる変異が重要なマーカーとして注目されている。現在世界で発見された肥満関連SNPは約100種、日本でも70種が報告されている。肥満関連SNPは、基礎代謝を鈍らせる倹約遺伝子と代謝を上げる亢進遺伝子がある。世界初の肥満関連SNPはベータ3アドレナリン受容体(β3-AR)で、1995年に発見された。アメリカのピマインディアンの50%以上が持ち、基礎代謝量を200キロカロリー倹約する遺伝子だ。
β3-ARは安静時代謝量に比べ、エネルギー消費が200キロカロリー少ない。UCP1(脱共役タンパク質1)は100キロカロリーのエネルギーを倹約する。反対にβ2-AR(ベータ2アドレナリン受容体)は、300キロカロリー多くエネルギーを消費する。京都市立病院糖尿病代謝内科の吉田俊秀部長に聞いた。
「倹約遺伝子を持っていても、基礎代謝が鈍るのは40代以降です。おそらくミトコンドリアの老化が原因と考えられます。運動で筋肉が増えると代謝は上がりますが、基礎代謝にはほとんど影響ありません。肥満関連SNPがある人はそれを自覚して、食事でコントロールしないと体重は減りません」(吉田部長)
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2012年8月17・24日号