東日本大震災から1年半が経とうとしているのに、いまだに国の新たなエネルギー政策はまとまっていない。各事故調の報告書は「人災」「不手際」を指摘するだけで事故の本質に迫れず、原発の存廃論議は平行線だ。日本の命運を決する次なるエネルギー戦略はどうあるべきなのか? 元原子炉設計者でもある大前研一氏が、検証する。
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政府の中長期エネルギー政策では2030年時点で、原発依存度に関係なく、再生可能エネルギーの比率を30%にしている。このうち水力発電が約9%だから、水力以外の再生可能エネルギーで約20%ということになる。
水力以外の再生可能エネルギーでは、風力、太陽光、地熱の三つが有力といわれている。しかし、風力は風頼み、太陽光はおひさま頼みであり、稼働率は風力が平均20%、太陽光は同15%くらいでしかない。したがって風力と太陽光で20%を安定供給するためには、極論すれば、日本に必要な電力量の「100%」を発電できる施設を作らなければならなくなる。これは明らかに非現実的である。
なぜなら、太陽が照りつけ風が吹きまくった時はこの二つだけで全体の需要を満たしてしまうので、火力や原子力を止めなくてはならない。しかし、火力や原子力の大型発電施設は需要に合わせて操業するには適していない。これほどの容量を蓄電池に貯めることもできない。
一方、風も太陽もダメ、という時は火力で追加的に20%発電しなければならない。これは普段から20%の余剰発電力を温存しておかねばならない、という超無駄なことになる。原子力のパーセントを決める前に再生可能エネルギーを30%と決めたこと自体に大きな問題があるのだ。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号