日本が“長寿世界一の座”から転落した。厚労省が7月26日発表した2011年の日本人の平均寿命は女性85.90歳、男性79.44歳である。この結果、26年連続で世界一を守ってきた日本人女性の平均寿命が香港の86.7歳を下回ることになったのだ。香港は男性も80.5歳と世界1位である。本誌は現地取材を敢行して、“長寿の秘密”を徹底調査した。
香港人の健康は公立医療と私立医療の二本の柱で支えられている。
私立病院の多くは医師個人や、教会・宗教団体によって運営される。ほとんどが予約制をとるため、待ち時間はない。香港で先端医療を提供する私立病院関係者に話を聞いた。
「当院は、24時間緊急サービスを提供しており、一般診療をする医師だけでなく、放射線科の専門医師も常駐しています。最先端の放射線療法であるサイバーナイフやカテーテル技術も備えているので心臓手術も可能です」
中国語・英語だけでなく日本語などの外国語が話せるスタッフがいる病院もあり、ホスピタリティも充実している。
「手術代は医師の技術力や評価によって異なります。例えば、がん細胞を取り除く外科手術でいえば20万円ですむ医師もいれば、100万円以上請求するドクターもいます。診療費や入院費もピンキリです。当院ではスタンダード(5~6人)が1日7000円ですが、VIPルームでは4万~6万円はかかります」(同前)
治療・入院費こそ高額だが、私立病院に在籍している医師の多くは、欧米で先端医療を学んだ経験を持っている。
香港在住の日本人が話す。
「私立医療にかかる場合、香港市民は“いい病院”ではなく“いい医者”を選びます。私立病院で働くほとんどの医者はフリーランスなので、一つの病院で働く勤務医はあまりいない。腕が良ければ有名病院から声がかかるので、収入もアップします。反対に評判が悪ければ契約を打ち切られることになる。こうした実力主義が、結果的に医療水準の向上に繋がっていると思います」
※週刊ポスト2012年8月17・24日号