ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を展開する『メルマガNEWSポストセブン』。8月3日に配信された26号では、森永卓郎氏が登場し、自民党や公明党が次期衆院選の看板政策として打ち出した公共事業の拡大策に言及する。
自公の政策は、ともに事前防災や減災のための事業を拡大するというものだが、その規模は自民党が10年間で200兆円、公明党が10年間で100兆円。今年度予算の公共事業費は5兆3000億円なので、この事業費が巨額であることは間違いない。まさに、公共事業の拡大そのものであり、民主党が掲げた「コンクリートから人へ」という基本政策を否定するものとして、民主党の前原誠司政調会長も厳しく批判している。
そんな自公の公共事業政策を森永氏はどう案じているのだろうか。
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私は防災・減災のための事業を拡大すること自体に反対ではない。その理由は2つある。一つは、デフレ脱却だ。1997年から15年間も続くデフレのなかで、日本経済は確実に体力を失ってきた。15年間で名目GDPは11%も減少し、株価も、地価も半額になった。さらに税収も54兆円から42兆円へと12兆円も激減した。いまのような縮小スパイラルを続けていたら、日本経済は本当に元に戻れなくなってしまう。だから、デフレから緩やかなインフレへと切り返すきっかけが必要なのだ。
もう一つは、防災対策の重要性だ。東日本大震災の際に、東北自動車道は緊急車両の通行や復興物資の輸送で大活躍した。あれだけ大きな地震が発生したのに道路が寸断されなかったのは、実は震災前に地震対策の工事が行われていたからなのだ。
明確な時期の特定はできないが、首都直下、東海、東南海の大地震は、確実にやってくる。それもさほど遠くない時期に来る可能性が高い。そのときのための備えをしておくことは、日本の経済や社会を守るためにどうしても必要なことなのだ。
問題は、そうした大きな投資を増税でやるべきではないということだ。防災の投資というのは、国土を何十年というスパンで守るためのものだ。つまり、その便益は何十年にもわたって国民を潤す。だから、財源は建設国債でまかない、60年かけて償還していけばよいのだ。その意味では、自民党や公明党の提案している建設国債を財源とする防災・減災事業というのは理にかなっている。ただ、いきなり100兆円もの国債を増発して、それを市場が消化しきれるかどうかというのは微妙なところだ。国債の金利が上昇するかもしれないし、下手をすると日本国債を外資に押さえられるきっかけになってしまうかもしれない。
だから、一番の安全策は、日銀が100兆円分の防災国債を買い取ることだ。そうすれば、市場に供給される国債の量が増えないから、国債価格が下落するリスクは小さいし、外資に保有されて、日本国債が翻弄されることもない。