次の総選挙の目玉とされる橋下徹・大阪市長率いる『維新政治塾』の塾生リストを週刊ポストが入手した。リストの総人数は888人(男性785人、女性103人)に上る。
塾生の主体はこれまで政治活動とは無縁だった一般市民である。会社員、会社経営者、主婦、医師など、その職業はさまざまだが、中でも一風変わった経歴を持つのは、元NHK職員でM-1グランプリの準決勝に進出した経験を持つ元お笑い芸人の山田和史氏(33)や、昨年の「国民的美魔女コンテスト」のファイナリストとなった海老澤由紀氏(38)。
大阪出身の海老澤氏は、昨年11月の大阪W選後に自らのブログで、〈次回の市議選に出てみようかと考えはじめています〉〈既得権益のない素人だからこそ、今のシステムを壊すことができるのだという確信を持ちました〉と、政界進出の意志を述べている。
そうした市民感覚と対照的に見えるのは、既存二大政党からの“脱走組”だ。名簿には、民主党からは前原誠司・政調会長、山田正彦・元農水相、さらには野田首相の“最側近”といわれる手塚仁雄・総理補佐官の秘書、元秘書らが入っている(前原事務所は「そのような人物が当事務所にいた事実はない」と回答)。また、自民党からは佐藤ゆかり・参院議員の元秘書がいる。
彼らは“上司(の所属政党)”に見切りをつけたのか。それとも維新の会に“保険”をかけているのだろうか。
手塚氏の元秘書で、現在は目黒区議を務める松田哲也氏(47)の回答は締め切りまでに得られなかったが、手塚氏に訊くとこう答えた。
「松田は私の同級生で、5年間ほど秘書を務めてもらった。維新塾を受けていることは知っているし、彼は橋下氏とよく会っているようだね。でも、僕も松田とは今でも会っているんですよ」
橋下氏が原発再稼働や消費増税などを巡って野田首相を厳しく批判しているというのに、「盟友」が橋下氏のもとに参じていることの危機感は薄い。しかし、かつては民主党、あるいは自民党という大政党のために働き、やがては自らも公認を受けて政治家になろうと考えていただろう人物が、雪崩を打つように橋下維新に逃げ出している事実は、無視できない現象だろう。
もちろん、名簿に載っている面々の大半は、政治力が未知数であることは間違いない。
しかしながら、与野党の談合政治にストップをかけ、「この国を変えてほしい」という期待が橋下氏に集まり、それを具現化するための力(国会議員)が維新政治塾のメンバーであることも事実だ。彼らの今後の動きを注視しているのは、既得権を守ろうと汲々とする永田町の住人だけでなく、数多くの国民でもある。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号