マイホームに次ぐ高額商品といわれる生命保険だが、その中味を正確に理解している人はどれだけいるのか。多くの人は「生命保険は難しい」という印象を抱くが、それは保険会社の“イメージ戦略”という側面が強い。実は仕組みそのものは単純だ。
注目したいのは、「定期特約つき終身保険」だ。1階部分の上に「特約」、つまり「おまけ」の2階部分が乗る構造になっている。しかし2階だけならまだいい。実際の商品では「障害特約」「疾病入院特約」「災害入院特約」「3大疾病特約」「介護特約」「リビング・ニーズ特約」など数え切れないほどの特約があり、生保レディはなるべく多くの「おまけ」を売って客単価を上げようとする。しかも、終身保険の部分の保障は薄い。
最近まで大手国内生保がこうしたわかりにくい商品を売りまくってきたわけだが、そんな「生保の常識」が今、大きな曲がり角を迎えている。
毎月少額ずつの保険料なら余った生活費から支払ってもいい……という国民の意識は今や昔のこと。長引くデフレ不況による収入減で、固定費の中心である保険の見直しの気運が高まっている。「大リストラ時代」の到来である。
1世帯が1年に支払う保険料の平均は45万4300円だが、保険料の推移を見ると、その金額は1997年をピークに年々減っている。過剰な保険を掛け過ぎていたことに気づき始めた人が、保障をシンプルにしたり、安価な商品に乗り換えたりして、保険料を削る努力を始めているのだ。
生保の主力商品も変わってきた。前出の「定期特約つき終身保険」は次第に契約件数を減らし、「医療、がん保険」に変わってきている。しかし、この流れにも生保の戦略が隠されている。
少子高齢化によって子供がいる家庭が減ったり、単身者が増えたりしたことで、昔ほど遺族にお金を残す必要がなくなり、死亡保障の商品の契約が減少してしまった。そこで生保は、新たな金脈として“生きている間のリスク”を強調し始める。最近、やたらとがん保険のCMを見るようになったのはそういうことだ。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号