みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、部分収骨、全収骨以外にもう1つ、地方によって大きく変わる火葬の風習「火葬を行うタイミング」について解説する。
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北から順に書いていけば、北海道の一部。そして福島県の一部を除く東北の全域、千葉県、山梨県、静岡県、茨城県の一部。さらには一部を除いた鳥取県、島根県、熊本県、沖縄県では、葬儀の前に火葬を行なうのが一般的である。
要するにこの地域の葬式では、祭壇には故人が納まった柩が祀ってあるのではなく、すでに燃やされた骨の入った骨壺が祀ってあるのだ。
この葬儀前に火葬を行なうことを、“骨葬”とか“前火葬”と呼ぶが、この土地の人にとっては、それが当たり前の風習だ。交通の便が悪い地域なので、親族が全員揃うのを待ってから火葬にすると遺体が傷むから先に火葬するともいわれているが、たしかに、骨葬地域は雪深い土地が多い。
でもそれならば、日本が誇る豪雪地帯の新潟県にも骨葬の風習があってもよさそうなもんなんだが……。いくら田中角栄が新潟県内の道路事情を充実させたからといって、そう簡単に昔からの風習が変わるとも思えないしなァ~。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号