「見て見て。これが私のよ!」
そういって作品を指さした若い女性が、顔を赤らめ、すぐに指を引っ込めた。
ロンドンの中心、コーク通りにあるヘイヒル・ギャラリー。数多くのギャラリーが立ち並ぶ通りのなかでも、ここはひときわ大勢の客でにぎわっている。70代らしき老夫婦から20歳に満たないようにも見える若いカップルまで年齢層は様々だ。通りを歩く人々も、一体どんなものを展示しているのかと興味津々に中を覗き、吸い寄せられていく。
展覧会初日には800人もの人が訪れ、その後も来場者が絶えないことから当初5月8日から6月2日までの予定を急遽1週間延期したほどの人気ぶりだ。
展示会のタイトルは『The Great Wall of Vagina』。直訳すれば「女性器の偉大なる壁」で、世界20か国571人の女性器が作品として展示されている。
壁一面に飾られた白い大きな額に近づくと、そこには女性器をかたどった石膏でできた精緻な模型がびっしりと並べられている。小陰唇やクリトリスの大きさ、大陰唇の膨らみなど、一見して一つとして同じものがないのがわかる。中には大きなピアスをつけたものなどもあった。
冒頭の若い女性は作品の協力者のひとりで、自分の女性器模型をつい指さしてしまったというわけだ。ギャラリーを訪れた老若男女は皆、食い入るように作品に見入っては驚きの声をあげた。
「こんなにたくさんの女性器の形があるなんて、正直、ビックリしましたね」(22歳・女性)
「出産後、自分の性器の形にコンプレックスを持ち続けていましたが、この作品を見て、気にする必要なんてないんだと自信がもてました」(32歳・女性)
上記のように、欧米ではアートとして高く評されたこの作品展。この“アート”を、日本人はどう受け止めるのか。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号