寝不足ぎみの五輪観戦中、疲れた身体に栄養ドリンクでパワー補給をしている人もいるだろう。いま、コンビニやドラッグストアの陳列を拡大させて活気づいているのが、この栄養ドリンクの中でも「エナジー系ドリンク」と呼ばれる市場である。
いわゆる薬瓶タイプの栄養ドリンク(医薬品、医薬部外品)ほど効果や効能はうたえないものの、多くのエナジードリンクに含まれるカフェインやアルギニンといった成分、それに炭酸効果のおかげか「一度飲むと、気分がしゃきっとしてお酒を飲んだ後のような高揚感がある」(消費者)と人気になっている。
飲料総研によると、昨年のエナジードリンクの市場規模は約3400万ケース。1ケース2000円で換算すると、約680億円も売れた計算になる。しかも、今年の1-6月期は前年比で120%の伸びを示しているというから、いかに愛飲者が増えているかが分かる。
実際に売れ筋の商品を見てみよう。(2011年実績で%はシェア/飲料総研調べ)
1位 オロナミンC(大塚製薬)1080万ケース 32%
2位 デカビタC(サントリー)840万ケース 25%
3位 リアルゴールド(日本コカ・コーラ)760万ケース 22%
4位 ドデカミン(アサヒ飲料)450万ケース 13%
どれも日本では定番といえるが、上位の牙城を打ち崩す勢いの商品も多数ある。その筆頭格が2005年にオーストリアから派手に進出してきた、“赤い牛”のトレードマークでおなじみの『レッドブル エナジードリンク』(レッドブル・ジャパン)だ。同社は販売数こそ公表していないが、「300万ケース以上は出ているはず」(業界関係者)という。
そして、今年の3月から『バーンエナジードリンク』(日本コカ・コーラ)が、5月からはアサヒ飲料がアメリカ発の『モンスターエナジー』の輸入販売を開始。エナジードリンクの市場はまさに群雄割拠の様相を呈している。
しかし、そんな状況に危機感を促すのは、前出・飲料総研の宮下和浩氏である。
「最近でこそコンビニに栄養ドリンク専用の棚が設置されるなど売りやすい環境になっていますが、商品数が増えればそれだけ占有面積が狭くなるのは当然ですし、共倒れの危険も出てきます。特に新参者のバーンやモンスターエナジーはしっかりと商品戦略やターゲット層を打ち出していかなければ、所詮は商品イメージの近いレッドブルの“引き立て役”で終わりということも考えられます」
さらに、宮下氏は王者、オロナミンCの不動ぶりも匂わせる。
「幅広い年齢層のファンやケースでのまとめ買いに支えられてシェアを占有し続けてきたオロナミンCはここ数年伸びが鈍化していたのですが、昨年の震災後にまた販売数を回復しているもようです。各社、新商品は次々と出すものの、オロナミンCに追い付くのはなかなか至難の業といえますね」
五輪はそろそろ閉幕だが、エナジードリンク「夏の陣」はまだまだ終わらない。