国内

ゲーム化するいじめ「○日で潰した」とクリア感覚で喜ぶ子も

 社会問題化するいじめ。かつては、いじめっ子といじめられっ子がまったく別のグループに属するということが多かったが、最近では同じグループの中で“いじめ”が起こることが多い。グループの中で人間関係を構築していく過程で、誰かが“標的”となり、“いじり”が始まり、加えて、あるスイッチがはいると“いじめ”へと発展していくのだという。そんな状況となっても、いじめられっ子はグループに属していることを求めるケースが多い。著書に『若者たちに何が起こっているのか』(花伝社刊)がある社会学者の中西新太郎氏はこう説明する。

「子供たちにとって友人関係とは、家族以外に唯一、社会と繋がっているもの。無視されれば、それが“0”になってしまい、自分が透明人間みたいな存在になってしまいます。それは本人にしてみれば、死ぬことより苦しいんです。それを考えれば、いじめられてもいいから、グループの仲間にいたいと思う子供が少なくないんです」

 だが、一度、いじめへのスイッチがはいってしまうと、いまの子供たちは、相手が“潰れた”とわかるまで続けることが珍しくない。さらに恐ろしいのは、いじめられている当人が“潰れる”最終段階が自らの命を絶つことであるという可能性すら感知できない、想像力の欠如である。

「いじめっ子にすれば、自分に屈しない子がいるということは、自分が否定されているのと同じことなんです。自分の価値が咎められている気がするんです。ですから、徹底的に最後まで続ける。しかも質が悪いのは、一度、その味を覚えてしまった子は、一種のゲーム感覚で、それを続けていくことです」(前出・中西氏)

“○日で潰した”、“今日はひとり潰した”などと、まるでテレビゲームをクリアしたときと同じような感覚で喜ぶ子供もいるというから、ゾッとする。しかも、近年はその手法も携帯電話の普及などによって、多岐にわたっているという。

「携帯メールで“あの子、明日から無視ね”と、いじめっ子のひとりがグループ全体に一斉にメールを送れば、次の日から、その子は孤立します。周りの大人から悟られることなしに、指一本で、相手を不登校や自殺まで追い込めてしまうようになってしまったんです」(前出・中西氏)

 さらにネット社会到来で、その卑劣さは増しているという。文科省の「ネット上のいじめに関する対応マニュアル事例集」には、以下のようなネットによるいじめが綴られている。

●ある児童が、勝手に本人の名前を使われたうえ、ネット上の掲示板に出会い系サイトに書き込むような内容の不適切な書き込みを行っているかのように装われる被害を受けた。

●ある生徒が、同じ学校に通う生徒について、事実無根の内容のメールを作成し、4人以上に送信するように促すチェーンメールとして送信した。

●ある女子生徒は、本人の知らないうちに自分の名前を使われ、「私は男好きで、いろいろな人と出会いたいと思っている」などの内容のメールを、不特定多数の生徒に送信された。

 時代の変化とともに、直接、手を下さなくても、相手をどんどん精神的に追い込んでいけるようになっているのも、いじめの陰湿さに拍車をかけている気がしてならない。

 また、痛みを伴わない無機質ないじめだからこそ、いじめっ子たちには、「これ以上やったらヤバい」といった危機感はなく、危険な状態なのだという。

「加害者側とすると、“相手に肉体的ダメージを与えていないからいいだろ?”という考えなんです。ですから、“相手が死んじゃうかもしれない”なんて想像力はないんです。あくまでいじめられっ子はゲームの駒にすぎなんですよね…」(前出・中西氏)

※女性セブン2012年8月23・30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン