次々と“教育ムラ”の隠蔽体質が明らかになる滋賀県大津市のいじめ自殺問題。ジャーナリストの鵜飼克郎氏が、役人たちの“事なかれ主義”の実態を報告する。そして、同氏は澤村憲次・大津市教育長にインタビューを行った。
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7月4日、テレビや新聞が、存在すら公にされていなかった2回目のアンケートの回答内容を報じると、校長はすぐさま反応した。朝の校内放送で「報道内容には嘘がある。自殺の練習は嘘です。マスコミの人の質問には答えないように」と生徒たちに言い訳し、口止めまでした。
事実が露見しても、組織防衛を続けた。生徒たちはそれを見抜いていた。「新聞に出るたびに先生の言うことがコロコロ変わる。嘘をついているのは校長先生のほうだとみんなわかっている」(中1男子)
そして、この状況でなお、「いじめ以外の家庭での問題がある」と主張を続けたのが、澤村憲次・大津市教育長だった。同氏への直撃取材では、こんなやりとりもあった。
――なぜこの期に及んで「男子生徒の家庭に問題があった」と言うのか。
「(家庭の問題は)具体的に言えない。いろいろ誤解を招いていることはわかっているが、学校からは亡くなったお子さんの家庭環境に問題があると聞いている。学校に関係すること、本人に関係すること、家庭に関係すること、この3つを調べなさいと文科省は指導しています。学校については私たちが調べるが、他の2つは調べられない。警察や外部の第三者委員会が明らかにしていくわけだが、全体を見ないと真相がわからないのでは、と言っているのです」
――いじめはあった?
「我々はいじめがあったと認めている。ただ、加害者の子供たちは、遊びやゲームの中のことでいじめだと認めていない。そこは私もわかりませんが、文科省が言っているいじめに該当するでしょうから、いじめはあったと思っています。学校は、亡くなるまでいじめがあったという認識がなかったというから、なかったのだと思います」
周到に「文科省が…」「学校が…」といったフレーズを挟み込む。声を荒らげることもない。「命の重みを感じて対応しているのか」という問いに対してはこう答えた。
「当然のことながら、一報を聞いた時にどうしちゃったんだ、何があったんだと驚きました。ただ、ご遺族から『これは学校の問題じゃない。家庭の問題なので表に出さないで欲しい』と申し出があったと聞いている。もし家庭に問題があるなら、学校が大騒ぎしてはいけないと判断した。3日目になってご遺族から『いじめがあったのではないか』と申し出を受けた。校内でも生徒たちが2日目から『いじめがあったのでは』と騒ぎ始め、学校も調査を始めたということだった」
嘘だと断じるのは厳しすぎるとしても、少なくとも問題を大きくしないほうへと逃げようとした印象は拭えない。
※SAPIO2012年8月22・29日号