『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を展開する。本サイトでは8月10日に配信された27号より「勝谷誠彦の今週のオピニオン」の一部を公開する。
《煮え切らない政局。永田町では政治家たちによって醜い“茶番”が繰り広げられている。他方で、海を越え、ロンドンでは日本人選手たちが喝采を浴びている。今、私たちの心を掴んでいるのは間違いなく後者だろう》
勝谷氏は、今まさに美しく躍動している日本人アスリートたちが示した「この国の本質」について語る──。
* * *
私はスポーツ記者ではない。言葉を紡ぐことを商売とするものである。だから個別の競技に言及する能力はないが、若きアスリートたちが示してくれたこの国の今の、ある本質はもうわかった。
ひとことで言えば「絆」ではないのか。東日本大震災や福島原発事故のあと、さんざんこの言葉は繰り返されたが私は「フン」と思っていた。放射能に汚染されてもいない瓦礫の受け入れを、わあわあ大騒ぎして拒否する連中が住んでいる国が何の「絆」だと感じていた。しかし今回、アスリートたちは間違いなく「絆」を示してくれた。
団体競技が異様に強かった。しかも金に手が届かなくても全力で戦い、銀や銅に涙を流してみんなで喜んだ。
これまでのところ今大会の最大の名言は競泳400メートルメドレーリレーで、北島選手以外の3人が話し合ったという「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかないぞ」だろう。北島康介といえば「チョー気持ちいい」「何も言えねえ」と五輪史上に残るセリフを残した名選手である。それらは圧倒的な強さで金メダルを獲得した時のものであって「節度ある傲慢さ」に日本人は酔いしれたのだ。
その第一人者にも衰えがやって来る。メダルにひとつも届かなかったこの大会で、後輩たちが「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかないぞ」と誓い合う。ある意味で、北島選手の言葉よりも美しい…いやいやそんなことはない。これらの3つの発言は響きあってこそ大和魂を世界に示していると、言葉をあつかうものの端くれとして私は感動するのだ。
(続く。次回は8月13日午前7時頃に公開予定)