白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、朝食を抜くと太りやすく長生きできない理由を解説する。
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最近、内閣府が発表した「食育の現状と意識に関する調査」によると、朝食を「ほとんど食べない」と答えた人は、20代男性で16.9%と年代別で最高だった。女性でも20代が7.3%と最も高かった。一方、60歳以上では90%を超える男女が「ほとんど毎日食べる」とした。調査では、若者の朝食離れが浮き彫りとなった。
朝食を抜いている若者のなかには、ダイエット目的という人も多い。しかし、最近の研究結果によると、朝食を抜くとダイエットに失敗するだけではなく、長生きできない可能性が示唆されている。なぜ、食事を抜いているのにダイエットに失敗し、しかも短命に終わるのだろうか? その理由はインスリンというホルモンにある。
インスリンは血糖を下げるホルモンで、このインスリンが分泌できないと糖尿病を発症することが知られている。インスリンの分泌能力は年とともに下がるので、年を取れば取るほど糖尿病を発症しやすくなる。
しかし驚くべきことに、100歳以上の超高齢者を調べてみると、糖尿病の人は極端に少なかったのだ。実は、糖尿病を発症すると平均寿命が10歳から15歳も短くなり、100歳まで生きられる糖尿病の人は稀であることが調査で分かった。
それでは、朝食を抜くとこのインスリンというホルモンの働きはどのように変わるのだろうか? 朝食を抜いた人の昼食後血糖は朝食を食べた人の昼食後血糖より上昇している。朝食を抜いたために昼食時のインスリンの効きが悪くなっているのである。
そのため1日3食を食べた人の血糖は緩やかな上下を示し、1日のインスリンの分泌量も少なくて済むのに対し、朝食を抜いた人の血糖はジェットコースターのように上下する。急上昇した血糖に反応して、過剰に分泌されたインスリンが血糖を下げ過ぎてしまう。インスリンは脂肪細胞に糖分を取り込む作用があるので、ダイエットしているつもりでも、かえって太ってしまう結果になるのである。
午後3~4時に無性に甘いものを欲しくなるのはこのインスリンの作用に他ならない。甘いものを食べるとこのイライラ症状を回避することができるが、再び同様の血糖の過上昇と急降下を繰り返すようになる。
そして、こうしたインスリンの過剰分泌を続けていると次第にインスリンの分泌ができなくなり、糖尿病を発症することになるので、長生きできないというわけである。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号